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見積もりが「100万円」超え…相場の5倍のケースも。引っ越し費用の価格高騰が止まらないワケ

1万人近い従業員数でも仕事が回らない事情が

 運送業界の「2024年問題」とは、トラックドライバーの時間外労働が960時間に制限される上限規制のこと。労働時間が短くなることで、仕事量が不足する現象を指します。  サカイ引越センターは2024年3月末時点で、引越し事業に臨時従業員を含めて9812人が従事しています。しかし、繁忙期は自社の人員だけで賄うのは難しく、運送業者に仕事を委託することも珍しくありません。  トラックドライバーにとって、春の引越しシーズンは稼ぎ時。特に需要が高い土日をフル稼働させることもありました。しかし、労働時間が制限されると、積極的に仕事を引き受けようとしなくなります。「引越し侍」の調査では、8割の会社が2024年問題の影響があると回答しました。  3月下旬は特に忙しい時期であり、パートナーとなる運送業者が動かないとなれば、仕事が受けられません。しかし、見積もりを依頼されれば出さざるを得ないのも実情。そうなると、見積もり担当者としてはとても依頼できないような高めの金額を出すこともあるでしょう。いわゆる“お断り見積もり”です。仮にその金額で依頼がきてしまったとしても、高額であればどこかの運送業者が動くでしょう。  引越し業界は構造そのものが大きく変化しており、この流れを変えることはできません。繁忙期の料金は高額であることを消費者がよく理解し、上手く利用することが求められます。

住民からのクレームも多い「タワマンの引越し」

 気を付けたいのが近年人気のタワーマンションへの引越し。多くの制限が課されるのです。SUUMOのアンケート調査で、タワマンの引越しで困ったことを聞いたところ、料金の高さを挙げたのが27.2%。時間帯の制約が18.7%、引越し会社を選べなかったが14.9%、マンション内での引越し日の調整の大変さが14.5%となりました(「タワーマンションの引越しで困ったことランキング」)。   新築マンション工事が終わると、一斉に入居が始まるために引越しが殺到します。エレベーターの数と搬入経路は限られているため、好き勝手に作業を行うことができません。そのため、幹事会社がスケジュールを取り仕切るという慣習があります。もちろん、幹事会社以外にも依頼することはできますが、調整は幹事会社が行うために自由度が低くなるのです。  面倒なので幹事会社に依頼するという人が多く、競争優位性が失われるため、結果的に料金は割高になります。  引越し会社にとって、タワマンの案件は決して美味しいものではありません。搬入に時間がかかり、狭い通路を運ぶために養生などの必要な作業が増えるためです。通路が一時的に塞がれる、エレベーターが使えないとなると入居者のクレームにもつながり、その対応に追われることにもなります。  幹事会社以外の引越し会社も、タワマンの案件は積極的に受けたがらず、結果的に料金は割高になるということもあるかもしれません。
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国土交通省は「引越し時期の分散」を求めるが…
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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