「人手不足で採用基準は年々緩くなっている。今までなら入社してこなかった人材が大量に入ってくるようになりました」こう嘆くのは大手企業の教育担当者。’25年3月卒業の大学生の就職内定率は92.6%。超売り手市場のなか、今年も大量の新社会人が誕生する。若手社員のトンデモ言動に困惑する声が聞かれるようになって久しいが、若手育成の難度は上がるばかりで、今やお手上げ状態の企業も珍しくない。コミュニケーションの齟齬は本当に世代の違いなのか、採用した企業が悪いのか。
若害の定義
①「お客さま」体質で業務遂行
②無責任な迷惑行為を多発
③仕事の価値は自分が基準
若者がすぐに会社を辞める原因は…
![[若害]の激ヤバ実態](/wp-content/uploads/2025/03/54da039369d867d1899a5c45c1da4d9b-2-550x414.jpg)
実業家の山本康二氏
なぜ、若者はすぐ会社を辞めてしまうのか。過去に部下から700人もの社長を輩出し、最近では合言葉
「ゾス!」(※1)や昭和的な社風でメディア出演も多い実業家・山本康二氏は、「原因は建前だけの関係性にある」と断言する。
「昭和世代と決定的に違い、今の若者は簡単に人や情報を信じない傾向にある。会社や上司に対しても同様で、求人にあるキラキラワードや上司の言葉も『大人がやっていることだから』と若者も噓で取り繕って流す。だから建前だけの関係性が構築されちゃう。そりゃ、愛社心なんて育つわけないよ。とにかく優しく接しようとしても、結局は上っ面のやりとりで、若手は本音を伝える術や機会を失う。結果、ある日突然、飛ばれちゃうんだろうね」
こうした状況のなか、一部の若者に “昭和的大人”へのニーズが生まれているとか。
「信用できる大人が少ないからこそ、逆に人間味をさらけ出してくれる大人には心を開いてくれるもの。僕の会社では、『第1段階、上司が言いたいことを言える』『第2段階、部下側も会社に言いたいことが言える』のレベルを経て、『第3段階、社会に向けても隠さない』ところまで到達してる。上司の給料やスケジュールも全社員がわかってるし、何かあったら『おーい!』のひと声で呼びつけられるほどの近い距離感。
馴れ馴れしさ(※2)もあるけど、それくらいがちょうどいい」
令和の時代のコンプラに抵触しそうだが、価値観さえ共有できていれば問題はない。
「入社前にそもそもこういう会社だってすべて見せてるから、
ミスマッチ(※3)は起きてない。『不満があればすぐに言え!』とも伝えているから、理由もわからず急に飛ばれたりもしないね。ほかの会社だと交わしづらい『服かわいいね』なんて会話も、言われた側はちゃんと拒否する権利があるってわかってるから、セクハラになんかならないし」
建前的な関係の改善に、すぐに試せることはあるのか。
「昭和生まれは、もっと昔の自分を思い出そうよ。『金八先生』や『ビー・バップ・ハイスクール』で育ってきた俺たちの根っこには、熱さがちゃんとある。なのに、時代の波に押されて思考停止し、その心が錆びついちゃっただけ。まずは、部下にすべてをさらけ出す勇気を持ってぶつかってみようよ。配慮は別だけど、遠慮はむしろ悪だよ」
若者に萎縮せず、堂々と接していいのだ。
※1:ゾス!
気合を入れるために挨拶や上司への返事として使われる言葉。山本氏のSNSには「ゾス! 一緒に働きたいです!」なんて若者からのDMが届くことも多い
※2:馴れ馴れしさ
深夜に部下からアポなし電話などがかかってくることもあるほど距離が近い。山本氏の社風を取り入れたベンチャーでは生産性が4倍に上がった例も
※3:ミスマッチ
すべてを「見える化」し、すべての裁量を社員に委ねているため、社風や業務に対する齟齬が起きづらい。建前を取り払うことが業務の効率化にも繫がる
【実業家 山本康二氏】
光通信で常務として1万人の法人営業組織を統括し、累計1兆円の売り上げを創出。若者と企業の成長支援に情熱を燃やす53歳
取材・文/週刊SPA!編集部