更新日:2025年04月01日 09:51
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大阪・関西万博のパビリオン建設はなぜ進まない? 建築エコノミストが驚愕するほどの「根本的な問題」があった

突如会場に現れた木造リング

 万博誘致の時点では土地の全てが埋め立てられた状態ではなく、未だ埋め立て途中を想定し、当初は会場のほとんどが水中に浮かぶ島々のような構成をとる多島海を会場デザインのテーマとしていた。  多島海を成り立たせているのは、「ボロノイ分割」という、数学的な面積分解であると同時に自然界に発生する有機的なパターンをも示していたものだった。  同時に会場構成に中心を設けないという考えも画期的なものであったろう。  東京オリンピック2020におけるメイン会場としてデザイン発表された有機的デザインの新国立競技場と同様に、万博誘致成功のひとつの鍵であったはずのアイデアが、紆余曲折や妥協の繰り返しなのか、デザインの内容が変質されてまったく違う物になっていた。

会場を取り巻く木造リング案の功罪

大阪・関西万博会場 木製リング 建築現場

J_News_photo – stock.adobe.com

 それは、会場を取り巻く木造リング案に変わってしまったのである。国際的な文化の違いや参加する企業のテーマ、様々なデザインや形状、構造方式や素材や色彩が異なる万博パビリオンはさながら建築の仮装パーティのようなものである。  視覚的にバラバラな要素を、それぞれの良さを活かしながら、いかにひとつの統一的な秩序やつながりに表現するのかが、いわば会場プロデュースの醍醐味である。  そういった意味では、全周2キロという大きなリングの視覚的効果は絶大で、特に空撮による視認性は高く、一見してそこが会場と分からせるものとなっている。  しかしながら、今回の関西万博におけるパビリオン工事は、工事の遅れだけでなく、計画の見直しや、予算の不足によって、やむなく個別パビリオンから共同建物への移行決めた国々もいる。
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パビリオン建築のファスト化
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建築エコノミスト/一級建築士 1965年岡山県生まれ。88年早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、齋藤裕建築研究所に勤務。独立後は戸建住宅から大型施設まで数多くの設計監理業務に従事するかたわら、建築と経済の両分野に精通した「建築エコノミスト」として地方自治体主導の街づくりや公共施設のコンサルティングにも従事。いわゆる「新国立競技場問題」「築地市場移転問題」では早くからその問題点を指摘し、難解な建築の話題を一般にも分かりやすく解説できる識者としてテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍する。 主な著書に『非常識な建築業界/「どや建築」という病』(光文社新書)、『ストーリーで面白いほど頭に入る鉄骨造』(エクスナレッジ)など。
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