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長野出身の30代女性が「東京の離島」に移住したワケ「本土で働いていたときと比べると、気持ちのゆとりを感じます」

本島とは“人との繋がりの強さ”が違う。一方で短所は?

――観光シーズンは夏場ですか? むーさん:7月末から9月くらいまでです。去年の夏は多い日だと1日に400人くらいの観光客が来ていました。シーズンを過ぎて10月になると閑散としているのですが。 ――受け入れるだけの宿はありますか? むーさん:宿は30軒近くあって常に埋まっています。夏場は伊豆諸島はどこも稼ぎ時なのですが、航路の中では大島に次ぐ観光客が式根島に来ている時期もあります。新島村に属しているのが新島と式根島なのですが、新島とは全然雰囲気は違うのかなと。新島はサーファーが多いですが、式根島はそうではないので。 ――本島と比べて暮らしに違いがいろいろあると思いますが、特に違いを感じることは? むーさん:いい部分を挙げると“人との繋がりの強さ”です。それと、気持ちに余裕ができることですね。例えば繁盛期の夏は島中がほぼ休みなしで3ヶ月くらい働きっぱなしの状態ですが、それでも「もう無理!」っていう気持ちになることはありません。東京で働いていたときと比べると、気持ちのゆとりを感じます。  短所は交通が不便だったり、天候が荒れていると4日間くらい荷物が届かなかったり……。隣の新島には空港があるのですが式根島にはなく、物資は船で来るので。荷物が来ないとアルバイト先の商店はガラガラですし、いざ届いたと思ったら賞味期限が切れていることもあります。台風が多かったり、海が荒れてしまう時期は大変ですね。それと物価が観光地価格になるのでちょっと高いと感じたり……。

明日葉やあめりか芋を後世に繋いでいきたい

むーさん

「明日葉」や「あめりか芋」を作る文化を後世に繋いでいきたい

――食料品はスーパーなどで購入していますか? むーさん:自分で野菜を育てていますし、農家のおばちゃんが「食べなよ」と言って野菜を持ってきてくれたり、漁師の方がおじちゃんが魚を持ってきてくれることも多いです。基本的にはそういう形で賄っていて、足りないものを商店で買っています。雑貨などは高いので、Amazonとかネットで買うことが多いです。あとは東京に行くことがあったときに買って帰ってやり繰りしています。 ――野菜は何を育てていますか? むーさん:メインで育てているのは「明日葉」と「あめりか芋」で、キュウリやトマト、白菜などの夏野菜も育てています。明日葉は伊豆諸島のほかの島でも育てられている野菜ですし、その辺を歩いている時に頻繁に見かけるくらい身近な野菜です。島民にとっては「その辺になっているのを積んで食べる」感覚でもあるのですが、私はしっかりとした状態の明日葉をたくさん作りたいなと思っています。 ――この先も島で暮らしていきたいですか? むーさん:できればそうしたいですね。明日葉やあめりか芋を作る人も減ってきているので、自分が作れるようになって後世に繋いでいければと思っています。 <取材・文/浜田哲男>
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton
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むーさんX:@shimaga_no1
式根島(有)おくやまInstagram:okuyama_shikine