コメ作り崩壊阻止、生態系保全etc. 田植え男子の社会的意義とは!?
―[都会の[田植え男子]の主張]―
都会に住みながら、休日に田んぼで農作業をする人々が急増しているという。現在、コメ農家の高齢化とコメ価格の低下で耕作放棄地が続出、田んぼは荒廃する一方だ。そんな農村の窮状を救うのが都会の「田植え男子」なのだ!
コメ作り崩壊阻止、生態系保全etc. 田植え男子の社会的意義とは!?
なぜ今、田んぼがブームになっているのか? 「はじめる自給」「大豆レボリューション」など、若者を農業の現場へ次々と送り込んでいる仕掛け人・ハッタケンタロー氏は、「若者が安心できる繋がり、コミュニティを求めているから」とみている。
「いつも時間に追われ、いつも同じ場にいて、いつも込み入った人間関係に苦労している。そういうストレスから自分を解放する場所として人気が出てきているのでは。つまり、普段とは違う場所、人脈、そして時間の感覚。それから、生活への不安も大きいのでしょう。『自給』という言葉は『自ら糸を合わせる』と書きます。単なる食料の確保だけではなく、人と人の繋がりも確保したい。不安な現代のセーフティーネットのような存在なんじゃないかと思います」
コメ作りはあと5年で破綻する!?
しかし現在、田んぼをとりまく状況は明るくない。農業ジャーナリストの大野和興氏は「コメ作りの現場はどこも高齢化が進み崩壊寸前。あと5年持つかどうか……」と危機感を募らせる。
「どこの農村でも困っているのは、とにかく人手が足りないこと。よく『耕作放棄』という言葉がメディアで使われます。しかし本当は、農村の人々は耕作放棄しているのではなく、続けたくても続けられないのです。コメの価格が安すぎるため、作れば作るほど赤字になる。また、昨年の農業就業人口の平均年齢は65歳で、そのうち70歳以上が48%という状況です」
大野氏は「多くの若者が農村に行くようになれば、この状況も変わるかもしれない」とも語る。
「そのために重要なのはマッチングです。農業を志す若者をいかに市場に繋げるかということ。政府や農協がやりたがっている国際競争力をつけて外国に農産物を売っていこうというのは古い考え。むしろ、食糧を自給したい都市の若者と、土地を荒廃から守りたい農村の人々が繋がることのほうが現実的です。
コメ作りで忙しいのは、苗床作りや田植え、草取りなど、ある程度時期が決まっています。そうした時期だけでも都会の人が作業をしに来てくれれば、だいぶ助かる。都市に拠点を置きながら、関われるときに農業に参加するだけでも、意義は十分あるかと思います」
田んぼを守ることは生態系を守ること
さらに、田んぼが荒れることによる生態系の破壊も問題になっている。
「田んぼが地域ごとの生態系の中でしっかりとあることが重要。温暖化や食糧危機の発生などを考えても、田んぼの維持はもはや安全保障の問題ですらあると思う」
こう語るのは「人と自然の研究所」の野口理佐子氏。
「田んぼは人間が作ったものですが、二次的自然として生態系の一部となっています。人間が関わることで、より豊かな生態系を保っているのです。これは世界に誇れる農業文化でしょう。特に、農薬を使わない田んぼは生き物の宝庫で、タガメやトウキョウダルマガエルなど絶滅危惧種の棲み処となっています。それに、田んぼの浄化能力はすごい。かつて100万人都市だった江戸を流れる墨田川が、世界のほかの大都市を流れる川と違って非常にきれいだったのも、人々の排泄物を田んぼが浄化していたからです。田んぼには水源を守るという効果もあり、豪雨のときに水を蓄え、土砂崩れを防ぐなどの治水の役割もあります」
田植え男子のニーズは高く、社会や環境に対する貢献度も高い。今こそ、田んぼで活躍する男子が求められているのだ。
伝統的な稲作の行われている田んぼは、両生類や水生昆虫、
淡水魚など生き物の宝庫。農薬を多用した大規模農場、耕作
放棄による農地荒廃などで、近年急速に生物の多様性が失われている
― 都会の[田植え男子]の主張【4】 ―
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