「全力で祭りを謳歌するサポーターの姿に感動」EURO2012@ウクライナ
いよいよベスト4が出揃ったEURO2012。予選からサッカーファンを眠らせない激闘が繰り広げられてきたが、残すところあと3試合。数々の印象的なプレイや歓喜に酔いしれる姿、悲嘆に暮れる背中など、心をざわつかされたシーンを振り返れば、すでにキリがない。しかし、現地に入った記者がもっとも印象に残ったのは、4年に一度のこの祭典を思いっきり楽しもうとする街中のサポーターの姿だった。
グループリーグが中盤に差し掛かった14日深夜に開催国ウクライナの首都・キエフ入り。適正料金の倍近い額を吹っかけてくる一台目との交渉決裂を経て、空港から乗ったタクシーのドライバーの左手には大きなケガ。左手は添えるだけのほぼ片手運転にもかかわらず、携帯電話に着信があると平然と右手をハンドルから離し運転する。電話が終わったかと思えば、いきなり知らない男が助手席に乗ってきた。そして、その15分後に何事もなかったかのように降りていくという不可解な出来事に遭遇。いきなり異国の洗礼を浴びたが、現地の治安に不安を感じたのは、この機会のみ。あとは、お祭りムードに酔いしれる数多くの幸福な笑顔がそこにはあった。
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風光明媚な街の中心通りに設けられた、ステージや大型ビジョン、アルコールやグッズを販売する露店が並ぶスペース「ファンゾーン」に足を運ぶと、正午前にもかかわらず、ビールが入ったプラスチックカップを傾け、どんどんと干していく各国からのサポーター。会場にはオフィシャルソングが流れるが、突然発生する合唱やシュプレヒコールは軽々とBGMをかき消してしまい、なかなか静まらない。大会開始直後、ポーランドからはサポーター同士のトラブルが報じられたが、キエフにはそんな殺伐とした雰囲気は一切見られず、むしろ奇抜なコスチュームを身にまとったサポーターには他国のファンも撮影を求めるといった光景をよく目にした。
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昼間から尋常じゃないテンションで騒ぎ続けるが、ゲームが近づいてくるとさらにボルテージは上がる。ウクライナの日没時間は21時半前後。試合はその後に行われるため、ほぼ半日飲み続けているにもかかわらず、勢いはまったく衰えない。ファンゾーンやレストラン、カフェでしこたま飲んだのちに、大きな声を上げながら、みなご機嫌な様子でぞろぞろとスタジアムへと向かう。
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スタジアム内の試合直前の期待感、90分間の熱気、そして勝利チームへの喝采は言うまでもない。もちろん、ピッチの照明が落とされたあとも長い一日はなかなか終わらない。24時を過ぎると観戦を終えたファンたちが深夜も営業している店舗に再度繰り出し、今度はビールに加え、ウォッカもどんどんと体内に収めていっていた。
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グループリーグも終盤に差し掛かると、だんだんと決勝トーナメント進出への望みが絶たれる、もしくは薄れる国も出てくる。しかし、そのことはサポーターの気勢を挫く要因にはまったくなっていないようだった。連敗で3戦目を迎えたオランダ、スウェーデンのサポーターの最終戦当日の盛り上がりは、どちらも対戦相手のそれを大きく上回っていたのはとても印象的だった。
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この街全体を覆う高揚した空気は、ヨーロッパの人々のなかで培われてきたサッカーを楽しむ文化に基づくものなのかもしれない。いつか日本でも、市民も海外からのサポーターも一緒になって、このように全身全霊でサッカーを謳歌できる日がくればと期待せずにはいられなかった。 <取材・文・撮影/江口裕人>
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(UEFA EURO 2012TM サッカー欧州選手権|WOWOWオンライン)
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