「原発国民投票議連」が盛り上がらないワケ【後編】
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1つには法的な問題がある。憲法41条では国会を唯一の立法機関と規定している。国民投票が実質的な立法機関としての役割を果たしてしまうと、憲法違反に当たる可能性も。憲法の改正ないし、特別立法により時限的な国民投票制度の導入を進めない限り、イタリアのように強制力のある国民投票を行うことはできないのだ。
そこで、原発国民投票議連が検討しているのは「諮問型の国民投票の導入」だ。諮問――つまり、結果に強制力はないが、参考意見にはするという国民投票。……投票の魅力は薄れるが、経済財政諮問会議で話し合われたことが閣議決定を経て内閣の基本方針となってきたことを考えれば、アリか?
だが、「諮問型」でも実現には程遠いという。ある民主党議員が話す。
「“脱原発解散”という、バカげた政争の火種として原発問題が扱われるよりは、国民投票でその是非を問うほうがふさわしいかと思いますが、今、原発の是非を問う国民投票を実施したら十中八九、反対多数でしょう? 感情論で反対票を投じる人がかなり出ると思う。それでは意味がない。国民があらゆる情報にアクセスできる環境ができて、客観的な判断ができるようにならないと、国民投票は結局、政治家の言い訳の材料にしかならないと思うんです。原発事故を見てもわかるように、不都合な情報を隠して世論を誘導することはいくらでもできるんですから」
確かに、桜井氏は「我々は別に反原発組織ではない」と再三強調していたが、メディアが反原発一色に染まるなか、国民一人ひとりが冷静な判断を下せるかは正直、疑問だ。
当然、政局に不利、という理由から国民投票に懐疑的な人も。自民党関係者が話す。
「国民投票なんて、人気取りだけで脱原発を言いだした菅さんの追い風にしかならないじゃない。そう思っているのは何も自民党議員だけじゃない。民主党内にも同じ理由で、参加を見送っている議員は多いんです。『菅さんが暴走するだけだ』って。まず、菅さんの信任を国民に問うっていうなら考えてもいいけど……」
屈折しているが……これも正論かも。「諮問型」ならば、国民に是非を問うテーマは何だっていいはず。むしろ、原発問題よりも冷静な判断が下せそう。超党派の議員がわんさか集まって、大いに盛り上がること間違いなし! 原発の是非を問う前哨戦としてはうってつけかもしれない……。
取材・文/池垣完
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