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水原一平氏の“違法賭博”、なぜ防げなかったか?誤解されがちな「スポーツ賭博」の今後も

 米大リーグで活躍する大谷翔平選手の専属通訳を務めていた水原一平氏が、違法賭博に関与した問題に、連日多くの注目が集まっている。すでにアメリカ連邦検察が水原氏を銀行詐欺容疑で訴追。一時身柄を拘束されたが、大谷選手との接触禁止やパスポート没収などを条件に保釈されている。
水原一平

水原一平氏。MLBドジャース対パドレス (C)SANKEI

 衝撃的だったのは、大谷選手の銀行口座からおよそ1600万ドル(約24.5億円)がブックメーカー(賭け屋)に不正送金されていたことだ。  スポーツベッティングの国内外の事情に詳しい弁護士法人C-ens法律事務所代表弁護士 森崎秀昭さんは「スポーツと賭博の関係性は、企業と同様のガバナンスやコンプライアンスが必要不可欠」だと話す。野球賭博が起きる原因や未然に防ぐための仕組みづくり、マインドセットの重要性について話を聞いた。

“頼れるお兄さん”だった水原氏の光と影

 森崎さんは、プロバスケットボール「Bリーグ」の前身となった NBLやNBDLの立ち上げに関わってきた。また、アスリートの不祥事やチーム・リーグ・協会のコンプライアンス・ガバナンス問題などの案件にも長く携わってきている。  こうしたなかで、大きな波紋を呼んでいる水原氏の違法賭博問題についてどう考えているのか。森崎さんは「今回の事件は、大谷選手を株式会社と照らし合わせると、問題の本質がわかりやすい」と話す。 「アスリートにおいては、ある程度の収入が入ってくると、お金の管理が必要不可欠になります。大谷選手を企業組織として考えると、トレーナーや財務、通訳、生活サポート担当などがいると思います。そこで財務を法人を作って管理するか、家族に任せるか、個人に任せるかなど、管理方法は人によってさまざまです。  野球選手としてのプレイのみならず、清廉潔白な人柄も評価が高い大谷選手であっても、財務管理のしっかりした仕組みが作れていないと、今回のような事件に巻き込まれることがあるというのが明らかになったのではないでしょうか」

ファイナンスに強い“右腕”の存在が必要

野球

※画像はイメージです

 違法賭博や不正送金を未然に防ぐやり方はなかったのだろうか。森崎さんは「管理者への監視が行き届かなくなることが原因」と語る。 「トップアスリートにはファイナンスに強い“右腕”の存在が必要で、本来はその人がガバナンスやコンプライアンスの視点から、誰がどのようにお金へアクセスするといった承認権限を決めていくことが望ましいと思います。大谷選手の場合、通訳だった水原氏がさまざまな場所で同席していたようですね。  今回の口座については、水原氏が通訳という立場を利用して、自身の権限でアクセスし、利用できるように不正に権限を変更したようです。大谷選手や財務担当の右腕が、常に口座の状況を監視できるようにしておければ未然に防げたはずですが、水原氏が通訳という立場を巧みに利用してしまったようですね。お金に関する業務についてダブルチェックができない、大谷選手やお金の管理者が直接最終権限を取得できていないということがが問題が大きくなってしまった原因かもしれません。  たらればになってしまいますが、現在の情報から推測をすると、口座開設時にも水原氏が同席して通訳をしていたようですが、本来であれば、口座開設についても専門家や専門の会社に依頼しておければ良かったのです。お金という非常に重要かつ人の欲を刺激するものに関する業務を、通訳というお金の専門家ではない人と一緒に行ってしまい、そこにお金のプロがいなかったことが問題かもしれませんね。  こうしてみると、海外に挑戦するアスリートは、本当にさまざまなリスクヘッジが必要で、本当の意味で信頼できる右腕の存在が非常に重要なことが良く分かります」
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「人間誰しも魔が差すこと」を前提に
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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