“ウチの言葉”で距離が近づくコミュニケーション術
何げない一言が相手に好印象を与えたり、予想だにしなかった地雷を踏んでしまったり。げに、コミュニケーションは難しい。そこで、どんなもの言いが、お得に効果的なのかを考えてみた!
◆「ウチの言葉」を効果的に使い、相手との距離を近づけよ!
前回まで「得するフレーズ/損する言い方」(https://nikkan-spa.jp/566929)を見てきたが、より印象的なコミュニケーションを目指すなら、「会話は効果的に“崩す”ことも大事」と、明治大学教授で言語学者の堀田秀吾氏は指摘する。
「人には心のナワバリがあり、それを言葉で調整しているという側面があります。丁寧語は相手を敬う気持ちは伝わっても、あくまでも特別な人=ナワバリのソトという距離感。踏み込んだ関係にはなりにくいんです」
ウチの言葉/ソトの言葉でわかりやすいのが、子供のケンカだ。友達と口論になったとき、なぜだか急に「言いました~」「やってません~」と丁寧語になったりする。それは相手を敵対する相手=“ソト”において心の距離を出すため。逆にビジネスシーンでは、丁寧な会話の中で、時折、ウチの言葉を織り交ぜると、相手との距離を近づけることができる。上司からの誘いに対し、「ご一緒させていただきます」より、「あ、行きたい!」と言ったほうが、気持ちが伝わることもある。
「また、オノマトペ(擬態語・擬音語)は、一般的に、教養と絡めて考えられることもあって、あまり使いすぎると幼稚な印象を与えてしまいます。が、右脳的表現――感情・感覚に一番近いところにある言葉なので、『ガンガンいきましょう!』など、効果的に使うと自分の感情をうまく伝えられる」
言い方やフレーズだけでなく、畏まったり崩したりとまあ何かと大変なわけだが、「会話こそが、自分の気持ちを伝えるのに一番、簡単な方法」だと堀田氏は続ける。
「感情を伝えるのに口調や話す速度など音情報が35%、表情やしぐさ、視線など視覚的情報が55%、言葉そのものが果たす役割はたった7%だといわれています。メールなどと違い対面での会話には、言葉に加え音情報、視覚的情報がすべて揃っている」
「あの一言が気に障らせてしまったかも……」と悔やむこともあるだろう。が、「言葉にしなければ考えていないのも同じ。言わない後悔より言っての後悔!」と堀田氏。
本当に損なのは「口にしないこと」、なのかも、しれない。
【堀田秀吾氏】
言語学者。1968年生まれ。明治大学教授。言語学、法学、社会心理学を融合させた独自アプローチで、司法コミュニケ―ションを分析。著書に『飲みの席には這ってでも行け!』
取材・文/志賀むつみ 田村竜馬 田山奈津子 古澤誠一郎 鈴木靖子(本誌) イラスト/岩井勝之 撮影/難波雄史
― [得するフレーズ/損する言い方]辞典【10】 ―
『飲みの席には這ってでも行け!』 人づき合いが苦手な人のための「コミュ力」の身につけ方 |
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