夫のイクメン化が妻の不倫を促す!?
思想信条から趣味、嗜好など、人は変わる。人との関係性もまた、変わりゆく。とはいえ、親しい人が突如、予想だにしなかった“変革”を遂げたとき、その変化を受け入れられるのか? 嫌いになれたら楽だが、嫌いになるのも難しいのである
◆夫がイクメンに目覚めて<佐々木美香さん(仮名・32歳)>
「おおらかだった妻が、出産後、教育ママ化というか、神経質なまでに育児マニュアルに縛られ始めて……。『3時間ごとにミルクをあげなきゃ悪影響が出る』と、夜中でも寝ている子供を起こして授乳したり。見かねて『やりすぎでは?』と注意すると、『あんたみたいなダメ人間になってほしくなくて、やってるんじゃない!』と取り付く島もなく、夫婦関係がギスギスしています」とは、ある男性(35歳)の嘆息。
このように、育児に目覚めた妻が夫を冷たくあしらうのは、よく聞く話。だが、イクメンが増える昨今、男女逆転現象も起きている。
「育児に目覚めた夫は娘のことしか眼中になく、私はないがしろにされている」とこぼすのは、2歳の娘を持つ佐々木美香さんだ。
「おむつを替えたりお風呂に入れてくれたり、初めは助かっていたんです。でもインターネットで育児に関する知識を仕入れるうちに『野菜の残留農薬が子供に悪影響を与える』とか徐々に変なこだわりを持ち始めたんです。安いからと中国産の野菜を買ったら、『お前が食べろ』と言い捨てられて。正直、ショックでした」
そして徐々に夫は、彼女の育児にダメ出しするようになっていく。
「『この子の食事はもっと細かく切らなきゃ』とか『今日は気温が高く、汗をかくのにそんな服じゃダメだ』とか。ついには残業のない部署への異動願を出して、保育園に行く準備から送り迎え、帰宅後の入浴に遊び相手と、すべて自分でやらなきゃ気が済まない状態」
共働きのため、夫が育児に積極的なのは助かる。だがそれは妻のためではなく、夫の目には愛娘しか映っていない。
「夫は娘とのスキンシップで満たされるのか、ずっとセックスレス。業を煮やして私から誘っても『子供が起きるから』と拒否される。『寂しい』と私がキレると、『そんな姿を子供に見せたらよくない』。たまらず『夫婦としてお互いに必要としてないなら離婚しようか』と切り出せば、『片親は子供がかわいそう』。万事がそんな調子です」
とため息をつく佐々木さん。夫は「育児をする自分は感謝されて当然」と妻の気持ちを顧みようともせず、周囲からは「育児熱心なダンナさんでうらやましい」と言われ、彼女のストレスは募る一方。
「私にはキスなんてしてこないのに、娘には頬やおなかにチュッチュとか、そんなキャラだったのかと……。その愛情を少しは私に分けてほしいですよ。最近は、割り切って不倫でもしちゃおうかな、って思うこともあります」
<事情通・おおたとしまさ氏が解説>
◆最も有効なカウンセリングは前向きな夫婦ゲンカ
私は「イクメン夫婦の皮肉な葛藤」と呼んでいますが、夫の育児への参加で夫婦間に溝が生じるというのは、実は珍しくありません。その原因は2つあって、ひとつは夫の育児のポイントがズレていること。例えば入浴のとき、面倒な前後の世話は妻まかせで、湯船に入れているだけで「育児している」と自己満足に浸っているなど。
もうひとつは、夫が育児を熱心にやっているのに妻が認めてくれないという場合。これは、夫が子育てに入れ込むあまり妻に愛情を伝えていないのが原因のことが多い。子供ができ関係性が変わるなか、互いにすれ違いを感じ、相手を認められなくなっているわけです。いずれの場合も、解決策は「対決」を恐れないこと。
この対決の目的は自分の違和感を伝え、相手の考えを知ることですから、勝ち負けや結論を求めてはダメ。共にやっていくための前向きな夫婦ゲンカが一番のカウンセリングです。
男は凝り性なので育児も理想が高くなりがちですが、親のしたい子育てを押し付けるのは危険。育児に正解はないし、夫婦で価値観をそろえる必要もない。ズレた価値観でやりとりするなかで互いに視野が広がり、その幅が子育ての奥行きになっていくものですから。
【おおたとしまさ氏】
育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー。All About「男の子育て」ガイド。著書に『パパのトリセツ』『オバタリアン教師から息子を守れ』など。2児の父
イラスト/佐藤ワカナ
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