サッカーアジア杯、日本代表初戦の相手パレスチナは脅威となるか?
今月9日に開幕したAFCアジアカップ2015。前回王者の我らが日本代表は、12日にオーストラリア南東部のニューカッスルで初戦をむかえる。狙うは当然連覇だが、意外にも世界が注目しているのは初戦の対戦相手だ。
◆練習をするのに検問所を通過、遠征は他国から
● THE GUARDIAN:http://www.theguardian.com/football/2015/jan/04/asian-cup-2015-palestinians-hope-footballers-can-put-them-on-the-map
●DAILY NEWS EGYPT:http://www.dailynewsegypt.com/2015/01/03/setting-benchmark-battle-statehood-palestine-asian-cup/
●AL ARABIA NEWS:http://english.alarabiya.net/en/sports/2014/11/25/AFC-condemns-Israel-s-search-of-Palestinian-FA-headquarters.html
●AFC:http://www.the-afc.com/palestine-asian-cup-2015/friendly-palestine-4-1-johor-darul-tazimライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
その対戦相手とはパレスチナ。1998年にFIFA(国際サッカー連盟)に加盟したばかりで、大きな国際大会の経験は皆無。もちろんアジア杯への出場も今回がはじめてのチームである。
そんなパレスチナ代表は練習をするだけでも一苦労。ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、イスラエル、南米、欧州など選手の出身や居住地はバラバラ。さらに集まるには検問所を通らなければならないため、練習が中止になることも珍しくないという。昨年末にはパレスチナ・サッカー協会の本部をイスラエルが捜索し、AFC(アジア・サッカー協会)が非難するという事件も起きている。選手の移動もままならず、遠征をするのにもエジプトを経由しなければならないなど、今大会出場国のなかで段違いの逆境に苦しんでいるチームなのだ。
政治、地理的に苦しい立場に置かれているパレスチナ代表は、大会前におこなわれるはずだったイランとの練習試合も直前に中止になってしまった。パレスチナ・サッカー協会の会長は「選手の故障が理由」と説明したが、ガーディアン紙によれば、湾岸諸国からの圧力やチームに4人のイスラエル市民がいることで敵国への遠征を回避したのではないかとの噂も出ているという。あらためて当たり前のようにサッカーができる環境がいかに恵まれたものか痛感させられるエピソードだ。
◆独立を目指す地域の希望となるか
世界に注目される理由は過酷なチーム環境だけではない。そもそもパレスチナを国家として認めていない国も多いのだ。2012年には国連総会で「オブザーバー国家」となったが、これはあくまで総会内での話。現在135カ国がパレスチナを国として承認しているものの、アメリカを中心とした北米、イギリスなどの西欧諸国、初戦の対戦相手となる日本、さらには開催国のオーストラリアにすら承認されていないのだ。こういった背景から、DAILY NEWS EGYPTはアジア杯に出場するパレスチナ代表が同じく独立を目指し、まだFIFAに加盟していないコソボやクルディスタンといったチームに影響を与えるのではないかと指摘している。スポーツである以上、いったんピッチに入れば政治や宗教は関係ないが、今大会で健闘すれば国際的な認知度や地位が向上することは間違いないだろう。
政治的にも、スポーツチームとしても意地を見せたいパレスチナ代表。下馬評では前回王者の日本が圧倒的に有利とされているが、サッカーでは何が起きるかわからない。年明けにはマレーシアのクラブチーム、ジョホール・タルル・タクジムFCと親善試合をおこない、4-1で下すなど準備は万端だ。日本代表の初戦は、さまざまな意味で見逃せない歴史的な一戦となりそうだ。 <取材・文/林バウツキ泰人>
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