更新日:2017年11月14日 14:33
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ご当地で売っていない駅弁の謎

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その57 ―

 最近、新幹線や特急列車に乗る機会が増え、やや鉄ちゃんが入っている初老のオヤジとしては嬉しい限りだ。そこでの楽しみといえば、そりゃ駅弁でしょ。 新みやぎ三陸黄金街道 この前、ふらりと東京駅で見つけた駅弁が、地元宮城の、しかも石巻地方のもので小躍りしながら買った。紹介しよう、それは「新みやぎ三陸黄金街道」という代物だ。黄金と聞いてピンと来てないが、日本最古クラスの金は、石巻地方の涌谷というところで採掘され、奈良の大仏建立の際に納めたと言われている。もちろん、中尊寺の金色堂の黄金もこのエリアのを利用している。だから黄金街道って言うんだけど、弁当の中身と全然関係ないじゃんね。  弁当は宮城の三陸方面の食材を確かに利用している。石巻の牡蠣と穴子、女川町のささかま、気仙沼のサンマ、南三陸の鮭などが入った、そりゃ素晴らしい出来だ。確かに食材を見ると、ずんだとか、牛タンが入ってないから、仙台地区とは一線を画している。これは石巻や気仙沼の駅弁だべ~と思って調べてみたら、現状では宮城県の場合、仙台駅でしか売ってない。臨時の販売や、企画、物産展は別としても、常設販売を石巻でしてないとはね。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=796559 新みやぎ三陸黄金街道 そういえば、昨年石巻初の駅弁、「みやぎ石巻大漁宝船弁当」というのがあったが、これも当初は、仙台のみだった。けどヒットしたおかげで、石巻でも売られるようになり、少しはほっとしている。  そもそも石巻では駅弁をあまり食べない。仙石線という電車が走っているが(現在震災で部分営業、しかもディーゼルで)、京浜東北線などのお古を使っており、横一列シートの電車では食べにくいでしょ。石巻はとりわけ、観光地ってわけでもないし、駅弁食べながら、石巻を出発なんて旅番組、見たことないもの。そういうわけで、駅弁文化はほとんど無かったのである。  駅弁を列車内で食べる風習がないとはいえ、ご当地駅弁が、地元で売ってないのは残念だと思って、周りを見まわすと、案外、ご当地以外の所で売っている駅弁が多いのに驚く。  例えば北海道、森駅のいかめしは超有名だが、森駅の1日の乗降客は200~300人程度。なんぼ売れても100個ぐらいだろう。ところがデパートの駅弁販売会などをやると、常にトップグループの常連で、数千個単位で売れることがある。  よく考えれば分かるが、今や駅弁は、ご当地のアイコンみたいなもので、消費は都会の駅弁売り場やデパートで売るのが当たり前になっている。ときどき大丸ピーコックやマルエツなどのスーパーでも、駅弁を売ってますからね。  というわけで、石川啄木が「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聞きに行く」と詠んだけど、 今は「ふるさとの駅弁なつかし、停車場の駅弁売り場に、そを買いに行く」じゃないでしょうか。
木村和久

木村和久

 そしてふるさとの駅弁を食べながら、ふるさとに帰るってなんかおかしくないか?  ちなみに駅弁ではないが、仙台の有名お土産「萩の月」は宮城、山形、岩手、福島のみの販売で、首都圏では正式には売ってない。ふるさとに帰らないければ買えない味。そういう頑固な駅弁があってもいいと思いますけどね。 ■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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