岩隈久志「去年は密かに20勝以上を狙っていた」
震災翌年の’12年、春。マリナーズ岩隈久志の記念すべきメジャー初登板は、開幕ロースター全30球団750選手の最後の最後、敗戦処理だった。期待値ゼロからスタートを切った男がチームの信頼を勝ち取り、勝利を積み重ねた苦労を語った。
メジャー3年目の昨年、春先の指の故障で開幕からの1か月を棒に振りながら、岩隈久志はキャリアハイの15勝を達成した。
「ひと月遅れで15勝って正直すごいですよ。14勝した一昨年の経験から『もっとイケる』という感覚もあって去年は密かに20勝以上を狙っていました。ケガさえなければ何勝していたんでしょう(笑)」
マリナーズは昨年、久々にプレーオフ戦線に名乗りを上げたが、162試合を終え、わずか1勝足らずでプレーオフ進出が断たれた。「岩隈のケガがなければ……」という“タラレバ話”は地元・シアトルのファンの間でオフの間、盛んに交わされていた。これは敗戦処理から先発を勝ち取った岩隈が、押しも押されもせぬチームのエース格となった証左だろう。
近鉄時代の’03年、15勝を挙げ、岩隈は11完投を記録した。しかし、マリナーズで15勝を挙げた昨年の完投数はゼロ。そこにはこだわりはないのだろうか?
「メジャーの先発投手は球数が決まっていて、100球でどれだけイニングを投げれられるかを常に考えながらゲームプランを組みます。100球で9回を投げようとは思わないし、実際なかなか投げられない。でも7回までは投げたい……そう考えると、いかにアウトを取るか、球数を逆算しながら投げるようになりました。日本だったら、ランナー2塁の場面では相手の様子を見るためボール球から入るのが定石ですが、そんなことしていたら球数が増え、バッターに打たれる確率が高まるだけ。そんな日米の違いを実際のメジャーのマウンドで投げながら感じることができる。これは自分の投手生命で非常に大きな経験でした」
アメリカの評価軸はそれだけではない。内容もさることながら、ケガせず中4日のローテーションを守ること。これを続けていくことが先発投手の評価に繋がるのだ。
「自分に課せられた役割をこなしていくことは、異国で評価を勝ち取るうえで大事なことなんです」
今や信頼たるべきエースとなった岩隈が、さらに目指すものはなんなのか?
「今年はケガせず先発として1年間フルに活躍したいです。昨年は1勝が足らず、プレーオフを逃してしまった。だから今年はその上を目指す。そしてワールドシリーズに出たいですね」
渡米から4年。ファンとの絆を感じながら、チームをプレーオフに導くため岩隈は投げ続ける。
取材・文/小島克典(スポーツカルチャーラボ) 撮影/ヤナガワゴーッ!
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