更新日:2023年04月20日 12:23
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小泉進次郎氏、“中身のない言葉”より残念な“サラリーマン臭”/倉山満

小泉進次郎

千葉県南房総市の石井裕市長(左)と、台風被災地を視察する小泉進次郎環境相(中央)。38歳の若き大臣に、我々は過度な期待を抱き過ぎていたのだろうか(写真/時事通信社)

小泉進次郎と比べ、田中角栄は、中身のない話で人を魅了する達人だった

 何を今さら。小泉進次郎環境大臣の発言が「軽い」「中身が無い」と批判されている。だったら、もっと早く指摘すべきだ。自民党政治家なんだから、こんなものだと。人間、何かを期待するから批判するものだが、小泉進次郎という今の自民党を象徴するような“サラリーマン議員”に、何を期待しているのか?  歴代自民党政治家で演説の名人と言えば、真っ先に思い浮かぶのが田中角栄であろう。角栄流演説術は今でも、政治家や大学弁論部で受け継がれている。かくいう私も、中央大学辞達学会(弁論部)で習った。  角栄流演説術の前提は、「中身がある話で他人に感銘を与えるのは当たり前。選挙民を前に中身のない話で2時間持たせて、初めて一人前」である。  なぜ、こんな能力が必要なのか。中身がある話は、必ず人を傷つけるからである。何かの政策に賛成か反対かを明言すると、必ず敵ができる。だから、幅広く支持を得るためには、政策を明言しない方が、都合が良いのだ。  現に、田中派は思想のカケラもない派閥だった。タカ派からハト派、学者からヤクザまで、あらゆるバックボーンを持つ政治家がズラリと並ぶ。だから、あらゆる陳情に応えられるので、自ら「総合病院」と豪語した。皆、角栄に魅了されて派閥入りしたのだが、政治家は単なる黄金では動かない。明治の時代から、黄金と情実が派閥政治の要諦だ。角栄は、中身のない話で人を魅了する、情実の達人だった。  本当に人を魅了するには、四つの要素がいる。  一つは、ツカミ。角栄の演説は常に突拍子もない第一声だった。 「御通行中の皆さんッ! 東京には空が無いッ! しかし、私の故郷の越後の新潟には青空があるッ! これはいったい、どうしたことだッ!」  通行人は、大きくダミ声で張り上げた「空が無い」の一言で立ち止まる。そもそも、冷静に考えれば「越後が新潟」なのだから、「越後の新潟」もおかしいのだが、そんな細かい理屈はドーでもいい。人に話を聞いてもらわねば、中身など意味がないと角栄は割り切っていた。
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進次郎氏に希望を持つかというと、具体像は何もない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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