おっさん×ハロウィン、この世で最も生産性のない組み合わせーーpatoの「おっさんは二度死ぬ」<第63話>
―[おっさんは二度死ぬ]―
昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート!
【第63話】おっさんたちのハロウィン
ハロウィンがやってくる。
渋谷あたりで大騒ぎし、軽トラなどをひっくり返してDJポリス! みたいな行事としてすっかり定着した感のあるハロウィンだが、本来は秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すための宗教的な行事らしい。まあ、あの渋谷の乱痴気騒ぎはある種、悪霊みたいなものだ。
ただ、このハロウィンに憧れを持つおっさんは多い。
それはなぜか。少し論理的に考えれば分かることだが、そもそも日本における乱痴気騒ぎ的なハロウィンはここ数年になって突如として盛り上がってきた行事だ。
まるで何者かの意思が介在したかのようにある時になって急に盛り上がった。なので、実は年齢層高めの人の意識にはまだそこまで根付いていないのだ。
クリスマスは12月25日だ。その前日のイヴである12月24日はエロく盛り上がる日だ。よもやその日付を知らない人はいないと思う。
ただ、これがハロウィンともなると、ちょっと怪しくなる。10月くらい? 天皇賞の日? となるのだ。最近になって根付いた行事であること、そしてその周辺の週末にも便乗して乱痴気騒ぎをしていること、これらがハロウィンの日付を分かりづらくしている。
こんな余談がある。
昨年のことだが、SPA!の副編集長と、担当編集さんと僕とでこの連載「おっさんは二度死ぬ」をいかにして打ち切るか会議みたいな飲み会を渋谷で行ったことがあった。渋谷の飲み屋に集合という予定だったが、全員がやや年配なので誰もその日がハロウィンであることを知らなかった。何も知らずに乱痴気騒ぎの渋谷に突入したのである。
渋谷に到着すると、狂った仮装に身を包む群衆が多数おり、ミイラ男やら魔女にもみくちゃにされて思うように進めず、誰も時間通りに到着できなかった。僕なんかは、飲み屋に到着してもなお、ハロウィンであることに気が付かず、渋谷の街も変わったな、変な人増えたわ、と思っていたくらいだ。それくらいおっさんとハロウィンはなじみがない。
これは裏を返せば、おっさんたちは誰も若い時にハロウィンを経験していないといえるのだ。あの乱痴気騒ぎ的なハロウィンを、お姉さんたちがちょっとエロい仮装に身を包むハロウィンを、盛り上がるハロウィンを、若い時に経験していない。ただひっそりとやっていた印象しかないのだ。やはりああいう行事は若い時に経験してこそだ。それがおっさんの中でハロウィンへの憧れを密かに強くしている要因になっている。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri)
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『pato「おっさんは二度死ぬ」』 “全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"―― |
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