更新日:2023年04月19日 21:04
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草食系おじさんが、ギャルに捕食されようと相席居酒屋に行った結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第61話>

 昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! patoの「おっさんは二度死ぬ」【第61話】チーターはシマウマを襲わない  チーターはシマウマを襲わない、という話を聞いたことがある。  獰猛な肉食獣で、その俊足を活かして数々の獲物を食らうイメージのチーター。大人しめの草食動物で、サバンナを舞台にしたドキュメンタリー映像では、比較的に食われ役なシマウマ。この二つが揃えば見るも無残な殺戮が繰り広げられそうなものだが、実際にはそうではないらしい。  現に、数多くの動物を展示しているサファリパークなどでは、チーターとシマウマを同じ区画に放しているところもあるそうだ。本来、危ない組み合わせの動物はエリアを分けて放しているが、チーターとシマウマは同じところに放されているそうだ。それでもやはり襲わないらしい。  これは、チーターの持つ「自分より大きな動物を襲わない」という習性によるものらしい。大人しいとは言ってもシマウマは大きい、そしてチーターはそこまで大きくない。だから襲わないというわけだ。  自分が持つイメージと実際に起こることが大きく乖離することは多々ある。チーターとシマウマの事象はほんの一例にすぎないのだ。そう深く考えずに漠然と感じていることは、多くの場合で間違っているのかもしれない。  「相席居酒屋」という飲み屋がある。何年か前に急速に増え始めた居酒屋だ。  普通の居酒屋と異なり、男女の出会いを演出する居酒屋と言えば分かりやすいだろうか。男性のグループと女性のグループが半強制的に相席になる。そこで盛り上がって後はご自由にというものだ。  ただし、普通に男女が相席になりますよ、と運営しても出会いを求める男だけで店内が埋め尽くされてしまうこと請け合いなので、多くの場合は女性が無料、男性が少し割高、みたいなシステムを採用している。そうすれば飲み食い目当てで女性が集まるかもしれないし、その女性目当てで男性が集まる、というわけだ。  この相席居酒屋、多くの繁華街でその看板を見かけるし、いまやかなりの数と種類の店舗が存在するようだ。僕は経験がなかったが、その存在自体はポジティブに捉えていた。  何せ、お酒を飲む席というものはなかなか打ち解けやすいものだ。あまり知らない間柄であろうと、少しギクシャクしそうな間柄であろうと、お酒を酌み交わせばまあまあほぐれる。2時間くらい一緒に飲んで全く分かり合えないまま、なんてことはそうないはずだ。むしろそれで分かり合えないなら、たぶん人間的に合わないのだろう。  なので、全く知らない女性と相席になっても、それなりに盛り上がって仲良くなれるんじゃないか、いつか行ってやろう、そう思っていたのだ。甲斐さんと松田さんの話を聞くまではそう思っていたのだ。そう、僕の持つイメージと実際の相席屋は大きく異なっていたのだ。
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相席居酒屋に乗り込んだエクセルとゼブラ
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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