更新日:2023年04月27日 10:37
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皇室に「男女平等」の価値観はいらない/倉山満

婚姻の自由だの男女平等だのは、皇室の歴史の前では風の前の塵に同じだ

言論ストロングスタイル

即位の礼と大嘗祭の期日を報告する「奉幣(ほうべい)の儀」に臨む黒田清子さん。「女性宮家の容認」をせずともご公務は続けられる。ならば、その意味はどこにあるのか(写真/時事通信社)

 安倍内閣が旧皇族の皇籍復帰と同時に女性宮家について検討するとの報道が流れた。いまだに国民の大半は女帝と女系の区別もついていない。皇室史の基本的な議論の方法を知らないから仕方がない。  そもそも他人の家の相続の方法に口を出すなど、失礼である。ましてや臣下が皇位継承に容喙(ようかい)するなど、不敬の極みである。だが、皇室の存続は国家の最重大事である。特に、政府が皇室を蔑ろにしている場合には、声を上げねばならない。多くの新儀を繰り返してきた安倍内閣に対しては、なおさら。  では、皇室を語る際に最も重要な原則は何か。先例である。「先例など、どうでもよい」と言った瞬間、その者に皇室を語る資格は無い。そんなに先例が不要なら、「民間人天皇」でも「外国人天皇」でも構わないのか? 皇室の歴史において、新儀は不吉である。少なくとも、無理矢理やるものではない。  だいたい、先例を抜きにして何を基準に語るのか? 「ボクが思いついた理想の皇室」か? 「アタシが考えた合理性」か? そういう論者に限って、婚姻の自由だの男女平等を持ち出すので、はっきり言っておく。婚姻の自由だの男女平等だのは、皇室の歴史の前では風の前の塵に同じだ。  現代で多数派の価値観を持ち出せば、誰もが黙るとでも思っているのか? ずいぶんと傲慢な議論の態度だ。結局、皇室を自分の考えた形に作り変えたいだけではないのか?  合理性を求めるべきなのは言うまでもないが、それは歴史の中に発見するものであって、誰かが発明するものではない。  皇室は何度も存続の危機に陥ってきたが、常に先例の中に知恵を求めてきた。そして一度の例外もなく続いてきた先例は、皇位の男系継承である。最も重要な先例よりも重要な価値観とは何なのか? 誰かの安易な思い付きに頼るほど、我が皇室は弱くない。これが議論の前提だ。  さて、政府が進めようとの女性宮家である。これは、江戸時代に先例がある。淑子(よしこ)内親王が当主となられた、桂宮家(かつらのみやけ)だ。一部の絶対反対派は、「当時の桂宮家を内親王殿下が継いだだけであって、女性宮家創設の先例ではない」と主張する。  厳密に事実を特定すればそうだが、人間界の出来事なのだから、「まったく同じことが起きなければ先例にはできない」では困る。だから、解釈の幅は許されるので、桂宮家を女性宮家の先例としても構わないし、絶対にやってはいけないものではない。
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先例だから何でも良い訳ではない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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