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皇室の女系容認論は詭弁。昨日までサラリーマンだった人を天皇の資格ありと承認できるか?/倉山満

皇位の“安定的”継承。これこそが、女系論者が流した詭弁の根本だ

言論ストロングスタイル

今年、お茶の水女子大付属中学校に入学された悠仁さま。皇位継承議論が遅々として進まなければ、将来、悠仁さまの肩にのしかかる重圧は計り知れないだろう(写真/時事通信社)

 彼らは、女系派の回し者か?  テレビで男系派の面々を見るたびに、天を仰ぐ。お世辞にも爽やかとは言えない面々が、非論理的な主張を繰り広げる。これでは普通の日本人は、「女系、女帝、女性宮家に賛成しなければならないのではないか」と考えざるを得ないだろう。  男系派最大の愚説である「皇室の存在意義はY染色体遺伝子だ!」は論外としても、日ごろは“信者”に囲まれている論者が「男系継承を認めないとは、皇室そのものが差別だということになるのではないか」などと口走ってしまう。  案の定、「皇室は存在そのものが差別だ。だから日本国憲法に基づいて作り変えよう」と主張している面々は、言質を取ったかのように拡散している。第三者を敵に回さないよう自覚をもってもらいたいものだが。  正直言うと、女系派の論者の方が学識はあり、その論理も秀逸である。女系派は邪悪だが、愚劣ではない。  その最も根本的な部分での詭弁を指摘しよう。女系派は「皇位の安定継承の為には、女系・女帝を容認しなければならない」と主張してきた。  曰く。男性皇族の数が激減し、将来は男性皇族がいなくなる。今さらGHQに臣籍降下させられ、何世代も民間人として過ごしてきた方々を皇族に復帰させるなど、暴論にすぎない。  たとえば、昨日までサラリーマンをやっていた人を、「今日から皇族です。天皇陛下になる資格があります」などと言って、国民が納得するのか。  それよりは、国民に親しみのある女性皇族に結婚後も皇室に残っていただく為に女性宮家を創設し、いずれは女帝を可能にする皇室典範改正を行う。  そうなると必然的に女系は容認せざるを得ない。まさか、今さら側室制度の復活など不可能だ。そもそも男系継承は側室制度を前提にした制度なのだから。云々。  感嘆したくなるほど、見事なまでの詭弁である。これに具体的な証拠を突きつけられて反論できる識者が、何人いるか。  かたや男系論者は、何かの一つ覚えのように「伝統だ」しか言わない。少なくとも世間からは、それしか言っていないように思われている。それどころか、女性差別論者だと思われているという自覚を持て、と言っても無駄か。  だが、テレビに出ている男系論者に説得力が無いからと、女系論が正しいわけではない。詭弁は詭弁だ。  皇位の安定的継承。これこそが、女系論者が流した詭弁の根本だ。
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本気で「皇位の安定継承」を言うなら…
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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