更新日:2023年04月27日 10:37
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皇室に「男女平等」の価値観はいらない/倉山満

先例にも、嘉例と悪例がある

 だが、先例だから何でも良い訳ではない。先例にも、嘉例(吉例)と悪例がある。たとえば「平清盛は先例にあらず」のように。淑子内親王は婚約者だった閑院宮愛仁(かんいんのみやなるひと)親王に先立たれ、生涯独身だったので、桂宮家は断絶した。嘉例とは言えまい。  また、何が何でも女性宮家を創設しなければならない理由は、無い。 「皇族の減少に際し、ご公務軽減の為」が大義名分だが、別に内親王殿下が皇籍を離脱しても、ご公務は続けられる。その代表が、「さーや」の愛称で親しまれた黒田清子(さやこ)様(紀宮=のりのみや)だ。  今は伊勢の祭主をお勤めになっておられる。将来は、愛子殿下にお勤めいただきたいと望まれている極めて重大な役割だ。現行の制度で何の問題もない。  また、女性宮家創設は、皇位継承とは何の関係もない。理由を説明しよう。  問題となるのは、女性宮の配偶者だ。配偶者の男性が民間人の場合、准皇族の身分となる。民間人から、准皇族となった先例は、少なからずある。敬称は殿下。これも先例が数多(あまた)ある。中には、農民の子供から殿下に成り上がった、豊臣秀吉(太閤殿下)の例もある。  ただし、その子は皇族にはなれない。当然、天皇になる資格は無い。だから、女性宮家を創設しても、皇位継承とは何の関係もない。  なお、女性宮の子供が皇族になる方法はある。皇族と結婚した場合だ。だが、男性皇族が激減している今、どこにいるのか。旧皇族の方々に親王宣下した場合のみだろう。あえて女性宮家を創設したいとの論に立てば、旧皇族の方々と内親王殿下の方々の婚姻を推進するしかない。ここで、人権だの、婚姻の自由だのを言い出せば、偽善だ。  そもそも、今でも古い家の子女は一族が決めた結婚を強制されている。政治家や高級官僚の子供が閨閥でつながっているなど、少し調べればわかる。日ごろは義務だけあって何の権利もない皇族の方々に、結婚だけ自由や権利を言い出すなど、偽善の極みにすぎない。  ただ、女性宮家を創設して旧皇族の方々と結婚していただいても、無意味に厄介な問題が生じる。仮に女性宮家に子供が生まれたとしよう。継承順位は、どうするのか。年齢順ならば、新儀の発生である。どういう理由で、わざわざ新儀をやるのか。男子優先なら、わざわざ女性を当主にする必要はない。  だったら、旧宮家を復活して内親王殿下に輿入れしていただく方が話は単純だ。皇族と結婚された場合は、現行制度でも女性皇族は皇籍離脱をする必要はない。皇族どうしの結婚は、無数の先例がある。また単純な算数だが、女性宮の配偶者が民間人の場合よりも、皇族の数は多くなる。
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皇室の男女不平等は、男性差別なのだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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