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百田尚樹さんは小説だけ書いてたら幸せな人生だった/倉山満×石戸諭

「情緒だけで動いている言論界は宗教戦争で、思想や愛国はないんです」

言論ストロングスタイル

(写真左から)石戸諭氏と倉山満氏。約80分にも及んだ二人の対談の全容は、YouTube「チャンネルくらら」にて動画配信、公開中 写真/山川修一(扶桑社)

 左から最も嫌われる左の言論の第一人者。そして、右から最も嫌われる右の言論の第一人者。「石戸諭」と「倉山満」を端的に言い表せばそういうことになるだろう。対談を通して見えてくる共通項に、今こそ求められる言論のスタイルがある。 倉山:私の『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社)と、石戸さんの『ルポ 百田尚樹現象』(小学館)は、戦後保守の、特に平成になってからの歴史を同じような手法で掴んでいる本なのだろうと思います。ネトウヨ・パヨクと罵りあっている状況の中、双方に向こう側の論理を知らないとダメだよ、という趣旨ですね。 石戸:いわゆる“左派、リベラル”は、どちらも似たようなものだと捉えがちだけど、「新しい歴史教科書をつくる会」の人たちと、百田さんがやっていたことは違うだろ、という結論です。 倉山:石戸さんが本の中でインタビューされているつくる会の藤岡信勝先生が、石戸さんのことを高く評価されていた。中にいない人はここまで取材しないと、右がわからないという流れで。私の本にも、そういった対岸で勘違いされている状況へのガイドブック的な意味があります。 石戸:本の中ではそうとは書いていないんですが、百田さんが小説だけを書いていたら、それはそれで幸せな人生だったのではないかと思うわけです。 倉山:ちなみに私、百田さんの作品でいちばん好きなのは囲碁小説の『幻庵』(文藝春秋)です。
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石戸諭氏

実は左派・リベラルが読んで納得していたという事実

石戸:僕も同じですね。興味深いという意味では『錨を上げよ』(講談社)です。多くの人はツイッターの政治的部分を百田さんの本体だと思っていて、問題あり、と思っている。確かに発言自体も、そこから派生した評論本なども問題が多いだろうというのはその通りなんですよ。でも、はたして彼が本業としている小説作品で、強烈な右派的イデオロギーと歴史観を全面に押し出しているかというと、そんなことはぜんぜんない。 倉山:『永遠の0』(太田出版)などを読むと、保守から嫌われている倉山満がよくこういうことを言っているよな、みたいなところが実際にある。特攻隊は可哀想である、死んでくれた人たちの悪口を言ってはダメだ。そういったことは保守の原点だと思うんですが、かといって死なせた人間の責任を問わないのは話が違う。百田さんもそんなことを言っている。 石戸:そうですね。僕もその点は考えが同じだから、わからなくもない。この本で重要なのは、サブカル系の太田出版から発売されて、実は左派・リベラルが読んで納得していたという事実です。 倉山:ツイッターを始めてから左派系の人が離れたみたいなことでしょう。ちなみに何も知らない人は私のことを左翼かと思うらしい。大東亜戦争とか、負けた戦争を美化してどうすんの、と言っていますから。
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「今、メディアも右左関係なく、SNS的な、幼稚な言論に引きずられている」
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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