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百田尚樹さんは小説だけ書いてたら幸せな人生だった/倉山満×石戸諭

「今、メディアも右左関係なく、SNS的な、幼稚な言論に引きずられている」

言論ストロングスタイル

石戸諭氏

石戸:その通りですね。勝ったのならともかく、負けた戦争は反省しなければいけない。本当に大義があって、勝てそうだというときに、多少の犠牲になってくれ、とみんなが納得し、戦争に突き進むのであれば、まだ振り返りようもある。だけど、大義、大義と言うだけで勝算がないのに泥沼に突っ込んでいく政治判断を美化しても、仕方がない。これはムードに流されているだけです。 先日、文藝春秋で、僕もついに国益という言葉を使ってしまった。中国の「千人計画」の話です。まさにムードで、在中日本人科学者へのバッシングが起きた。科学技術が、軍事転用される可能性は僕も認めます。でも、それが中国に職を求める科学者を責める理由にはなりません。日本を思い、安全保障が大事だというのなら、国がしっかり科学技術予算をさき、国内で十分に研究と生活ができる環境をつくるのが筋じゃないか、そうしなければ国益が失われるだろう、と書いてしまった。 倉山:それは火炙りにされないようにしないと。私も、学会にいたときには絶対に使えない言葉だったから、その気持ちはよくわかります。一般書のベストセラーを出すような立派な研究者である京大の先生が非常勤講師をやりながら、実は生計は京大駐車場の誘導のバイトに頼っていたという話があります。それを保守のおじさんたちは、耐えろ、信念を保て、などと言う。魂を売らずに10年間フリーターをやった私だから言えますが、殴るぞ、です。 石戸:経済合理性を保ち、その中でやっていこうという世界と恐ろしく違う。感情の世界だけでやってしまっているところがある。

信じたいものだけを信じるという幼稚な人が右にも左にもいる

言論ストロングスタイル

倉山満氏

倉山:私は、情緒、と言っています。情緒だけの人に向かって商売し、宗教戦争になってますます商売になる。阪神ファンが巨人に勝って喜んでいるのと一緒で、そこに思想や愛国はないんです。 石戸:そういう人たちに対する対応を、そろそろちゃんと考えたほうがいい。これはSNSの功罪の罪の部分です。僕が百田尚樹現象と名付けたものと言論の質の低下はSNSの負の部分と完全にリンクしていると思う。見たいものしか見なくなる、ということですね。そういう性質は人間みんな持っている。でも、もうちょっと大人になったほうがいい。 倉山:信じたいものだけを信じるという幼稚な人が右にも左にもいる。そのうえ、格闘家と格闘家っぽいプロレスラーは違うよ、あなたが好きな言論人はガチが弱いよ、地下闘技場で血を吐いて沈んでいるよ、ということに気が付かない。 石戸:中にいた経験からわかるんですが、今、メディアも右左関係なくSNS的な、幼稚な言論に引きずられている。双方不満は残るけど、ある程度妥協して、通じあえるところまでいくというのが政治です。だけど、今のSNSの流れを引きずりすぎているせいで、“論破”ということをしたがる。 倉山:100%否定したがるんですね。結局、保守だからこれには賛成反対、リベラルだからこれには賛成反対というテンプレがある。しかも、あいつが言っているから反対、ということになる。 石戸:幼稚な二択はやめよう、その間にいっぱい入っているじゃないか、ということです。社会をよくしようとか、こうなればいいとか、そういうことはつまり、現在の幼稚な二択から離れて、“大人”にならなくてはダメでしょう。 倉山:我々がこんな話をしなければいけないくらい、今は右も左もダメダメであるということですね。 【石戸 諭プロフィール】 ’84年、東京都生まれ。記者、ノンフィクションライター。毎日新聞社、BuzzFeed Japanを経てフリーランスに。’19年、ニューズウィーク日本版「百田尚樹現象」にて第26回雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞 『保守とネトウヨの近現代史』<取材・文/尾崎克之>
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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