小此木氏の出馬で、現職・林文子市長当選の可能性が低下
横浜市長選への出馬を表明する小此木八郎・前国家公安委員長
菅義偉首相(神奈川2区=横浜市西区・南区・港南区)のお膝元の「横浜市長選(8月8日告示・22日投開票)」が、政権の命運を左右する“天下分け目”の決戦になりつつある。
菅首相が幼なじみである
小此木八郎・前国家公安委員長への全面支援を表明。自民党横浜市議8割以上(36人中30人)もこれに同調していることから、「菅首相直系の小此木氏(準自民推薦)」対「非自民反カジノ候補」という与野党激突の構図に変わった。菅首相直系市政にイエスかノーかを問う“政権審判選挙”の色合いが濃くなってきたのだ。
有力候補から大きく後退したのが、今でもカジノ推進を掲げる
林文子・横浜市長。4年前は自公の支援を受けて反カジノ候補にダブルスコアで勝利したが、その時59万票を集めた“主力支援部隊”の大半が、今回は「カジノ取り止め」に方針変更した小此木氏支援に回っている。集票力の大幅ダウンは確実だ。
筆者はこれまで、小此木氏の出馬で反カジノ票が与党系と野党系に割れてカジノ推進候補(林市長ら)が競り勝つ可能性を指摘してきた。しかし、菅首相が小此木氏への全面支援を表明したことで林市長当選の可能性は低下した。
山中氏の決起集会で、「菅首相の小此木氏への全面支援」について話す共産党・畑野君枝衆院議員
林市長はカジノ推進の旗振り役である菅首相に「見捨てられた」ともいえるが、その変節ぶりについて
畑野君枝・衆院議員(共産党)は7月25日、立憲民主党推薦の
山中竹春・元横浜市立大学教授が挨拶した決起集会で次のように説明した。
「これまでカジノ推進で林市長を支えてきた自民党と公明党は、市民の『カジノ誘致反対』『勝手に誘致を決めるな』という大きな声を前に行き詰まり、こっそりと『カジノ誘致撤回』という候補の支援に回るという驚くべき状況が起こっています。何よりもカジノ誘致推進を進めた張本人の菅首相が、『横浜へのIR取り止め』という小此木さんに対して『私は小此木さんのぶれない信念と横浜の未来への責任ある決断を支持します』という推薦状を各団体に送っているのです」
山中氏(右)の出馬会見。左は、小此木氏を“隠れカジノ派”ではないかと疑う江田憲司・立憲民主党代表代行
さらに菅首相は7月29日発行のタウン誌でも小此木氏と対談、「全面的かつ全力で応援する」と明言した。横浜市政ウォッチャーは「小此木氏は菅首相の窮地を救った」と解説する。
「自公推薦のカジノ推進候補が野党系反カジノ候補と対決する構図のままなら、与党の敗色が濃厚だった。その結果『お膝元の市長選で勝てない菅首相』『選挙の顔として失格』という烙印を押される恐れがあった。そんな危機的状況を変えたのが、閣僚を辞任してまで出馬を決めた小此木氏。反カジノ候補の勢いを削ぐ“争点潰し(隠し)”の役割を買って出てくれたからです」
これに対して野党側は、小此木氏を“隠れカジノ推進派”と疑っている。山中氏の出馬会見に同席した江田憲司・立憲民主党代表代行は「もう騙されないぞ!」と銘打ったフリップを手に、林市長と小此木氏を重ね合わせたのだ。
「小此木さんの会見を聞いていると、なぜカジノ取り止めなのかは『まだ横浜誘致は環境が整っていない』と(言っていた)。それでは環境が整ったら(カジノを)やるのでしょう」
4年前の市長選で「白紙」と訴えて当選した林市長は、2年後の2019年8月に横浜へのカジノ誘致を表明。これに対して「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫・横浜港運協会会長(当時)が緊急記者会見で「顔に泥を塗られた。泥を塗ったのは林さんだけで、塗らせた人がいる」と切り出し、カジノ推進の急先鋒の菅官房長官(当時)が背後で影響力を及ぼしている可能性を示唆した。
同じように小此木氏も市長任期途中でカジノ誘致に方針変更するだろうと江田氏は見ているのだ。
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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