「自宅が放火された」ドイツ在住日本人が目の当たりにした“コロナ禍のEU先進国”
新型コロナウイルスのオミクロン株の話題が、テレビや新聞やWebメディアで連日取り上げられている。このオミクロン株がどのような変異株なのかは、まだ不明な部分が多い。が、世界各国はオミクロン株を警戒して再度の入国規制及び市民の行動規制に踏み切っている。「コロナ対策の優等生」と言われてきたドイツも例外ではなく、むしろ新規感染者が右肩上がりで増え続けている。
今回はドイツ・ベルリン在住の日本人ボンカレー越中氏(2019年から在住)に現地の様子をうかがった。「優等生」の現状は、どのようになっているのだろうか?
「ベルリン市民が抱いている“恐怖”とは、オミクロン株そのものよりもオミクロン株のせいで再びロックダウンが実施されるのかというものです」
越中氏は筆者にそう語った。ドイツでは新型コロナの第4波が猛威を振るっている最中である。が、長引くパンデミックは同国の経済に大きな影を落としている。端的に言えば「感染する不安」よりも「経済活動が停止する不安」のほうが大きい、ということだ。
「日本でも“ドイツのワクチン接種義務化”の話が報道されていると思います。ワクチン未接種者に対して大幅な行動制限を課す、ということも日本に伝わってるはずです。ただ、それは“ワクチンなんか絶対打たないぞ!”と決心している人が相当数いるということでもあります」
意外なことだが、ドイツのワクチン接種率は西欧の中でも低い割合に留まっている。Our World in Dataの調査によると、2021年11月25日時点でワクチンを2回接種したドイツ国民の割合は68.3%、12月9日時点で69.4%である。ちなみに12月9日の日本の2回接種率は77.8%だ。
さらに時が進んだ12月25日、ドイツの2回接種率は70.7%に達したものの、その数字は依然として日本に届いていない。接種が進んでいるとは言い難い状況だ。
「日本にも反ワクチン主義の人はいますけど、ドイツは日本以上の割合でそういう人がいると考えてもらって間違いないです。しかもそれは、新興宗教じみてます。どういうことかというと、反ワクチン主義を他人に強要しようとするんです。街頭でのデモやPRに留まらず、友人にも“ワクチン打つな!”って呼びかける感じです」
ドイツ人は「論理的」と言われている。実に冷静な論理を立てて会話し、整合性と根拠を大事にする……というのが一般的な「ドイツ人のイメージ」ではないか。
「確かに論理的ではあるんですけれど、そもそもの前提が間違っている状態で論理を組み立てる人も少なくないですからね……。あと、“ドイツ人”っていったって出自はバラバラですよ? ハンブルグの人かハノーファーの人かということじゃなくて、元々は東欧の人だったり中東やアフリカからの難民だったり南米からの移住者だったり。だから一言で“ドイツ人”と済ますのはナンセンスです」
その上で越中氏は、
「この国にもアジア系に対する差別はありますよ。だって私、道端でいきなり『Covid!』と言われたり自宅を放火されたりしましたもの」
と、筆者に告げた。
「前首相の発言はあまりよく知らないですが、ここに来るまでは差別はほぼないものだと思っていました。しかしいざ来てみると、それもパンデミックに陥ると、ドイツにも差別はあると分かりました」
反ワクチン主義はまるで「新興宗教」
「ドイツ人は論理的」は本当か?
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