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防衛費の引き上げ、“喫緊の危機”にもかかわらず「5年以内」のおかしさ/倉山満

ウクライナが軍事侵攻された二つの理由

 隣国、しかも核保有国が、侵略を始めた。ならば我々の採る方策は一つ。今のうちに備えるのみだ。
ジョンソン英首相とゼレンスキー大統領

ジョンソン英首相は4月9日、首都キーウ(キエフ)を訪問。ゼレンスキー大統領とともに市内を歩いて回った。会談では、軍事・経済両面からの追加支援が約束された 写真/dpa・時事通信フォト

 なぜウクライナは軍事侵攻されたのか。理由は二つある。一つは、元をたどればソ連崩壊の後、核放棄に合意したからだ。  国際社会の常識は、核を放棄すれば何をされるかわからない。イラクのサダム・フセインも、リビアのカダフィーも、核を持たない者は非業の最期を遂げた。一方で北朝鮮の金正日は核武装に成功。天寿を全うした。  第二に、ウクライナには、頼れる同盟国がなかった。ソ連崩壊後、アメリカを盟主とするNATOは東方に拡大、ロシアと国境を接するバルト三国やポーランドまでが加盟した。NATOの東方拡大はロシアにとって圧迫以外の何物でもない。逆に、米英仏独のNATO指導国は、好き好んで拡大した訳ではない。ロシアを怖がる小国が、NATOに安全保障を求めて入りたかっただけだ。しかし、最前線のウクライナだけは「盾」のような格好にされた。

GDPの9%を防衛費に投じ、防衛努力を行ったウクライナ

 ロシアはウクライナを国と思っていない。自分の手下くらいの扱いだ。そのウクライナが自分の支配を逃れてNATOにすり寄ろうとする。  ’14年には、ロシアはウクライナからクリミアを奪い、東部のドンバス地方を独立させた。  ロシアが人の国を奪い、勝手に独立させても世界のほとんどの国は相手にしない。しかし、ウラジーミル・プーチンは気にしない。  これに怒ったウクライナは、GDPの9%までかけて防衛費に投じ、防衛努力を行った。単なる努力ではない。ロシアに切り離された東部地方では、慢性的に抗争が続いていた。  米英を中心としたNATO諸国の援助を招き入れ、彼らの指揮の下で、復讐に備えて訓練を続けていた。有事の徴兵制も導入した。  つまり、ウクライナは敗れた後、国家意思を示したのだ。
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本気でロシアと戦う気だった主要国は……
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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