推定年収2500万円。優秀な後輩を大量に辞めさせ「異例の出世」をした50代役員。狙われた社員は“異端扱い”に
正社員数が300人以下の中小企業では、人事の3本柱の「採用、定着、育成」が大企業のようには立たない傾向がある。採用試験にエントリーする人は少なく、入社後の定着率は大企業よりは低い。辞める社員が多いがゆえに、管理職になる倍率は低く、管理職の部下育成やチームビルディング力も高いとは言い難い。
この会社は、正社員数千人の放送局の子会社。正社員数は250人程で、売上は100億円近い。創業から20数年が経つ。主な事業は、放送局の番組の支援。たとえば撮影や映像の編集、音響効果など。ディレクターやプロデューサーが番組をつくることもする。
大きな特徴は、放送局からの出向や転籍が全社員の7割を占めること。3割がプロパーとなるが、定着率は低い。元社員であるB、C、Dによると2010年までは中途採用のみで、その時期までに入社した社員45人程のうち、35人以上が辞めているという。2011年から始めた新卒採用で入社した正社員は30代後半までは定着する傾向があり、プロパー社員の大半を占めるようだ。
役員は、4人。3人は放送局からの天下りで、1人がプロパーの50代半ばの男性Aで、創業期に入社した。当時20代半ばで、ディレクターとしての経験を買われたそうだ。だが、20代半ばで「経験」と言えるほどの実績を持つ人はこの業界ではほとんどいない。
今回話を聞いた元社員Bは「当時の番組制作力は同世代と比べても低く、実際は未経験に近かった」と話す。実際、Aは後から中途採用で入ってくる社員で、将来有望視される男性を次々と辞めるように仕向けた。その数は、20人を超える。B、C、Dも、その中にいる。
元社員Bは「Aは部署の責任者である本部長や部長、副部長らのもとへ頻繁に行き、『彼は取材相手とトラブルを起こしたが、上司(部長)に報告することなく、隠している』と告げていた」と当時を回想する。
元社員Dは「あれは事実ではなく、ねつ造。だが、くどいほどに繰り返す。いつしか、本部長たちは、狙われた男性社員を異端扱いしていた」と話す。
Aは部署の女性社員には常にソフトに接する。狙った男性には口をきかず、挨拶すらしない。部内報や部の会議の議事録も、1人だけ回覧させないようにして読めないようにしていたという。ホワイトボードからも、氏名を消す。
こういう中から役員が選ばれる場合が多いのだが、一部には役員とはとても言えない人もいる。今回は、そんな役員を紹介しよう。ライバルを次々と辞めさせる男性Aである。
なお、今回の事例は筆者が取材したものであるが、特定されないように加工した部分があることをあらかじめ断っておきたい。本文中のB、C、Dは退職者であり、Eはこの会社から映像編集を請け負う会社の編集マンを意味する。これら4人から情報を得たのだが、ほかにも複数の退職者や編集マンからも話を伺った。
プロパー初の役員の素顔
将来有望な後輩の男を狙い撃ち
1977年、神奈川県生まれ。全国紙の記者を経て、2022年よりフリー
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ