死神さんが健太に伝えたかったこと――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』。連載も12回めです。

12月12日発売の『Yen SPA!』に神様ファミリーが出張しておりますので、本編とあわせてぜひお楽しみ下さい。

※⇒前回「仁上さん」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気

〈第12回 置き手紙〉

「慣れてきたら、きっともっと楽だよ。今日はたまたま初日だったからあんな感じだったけど、慣れちゃえばさ、きっと何も考えずに働いて、いつのまにか一日終わってるから大丈夫だよ」

「ソレガイヤナノ…」

「…」

「ダッテ…ソレジャ…」

「なに?」

「ナンノタメニイキテルノ?」

「!!!そりゃ!食べていくためだよ!死神さんだってもう家族みたいに住みこんでるし!最近ちょっと距離も近いし!だんだん食べる量が増えて来てる感じもあるから、なんとかしなくちゃって思うじゃん!だって!俺が働かなくなったらふたりとも死んじゃうんだよ!」

「デモ…」

「でもじゃないの!俺は投資に向いてないんだから!もうマジメに働くしか道が残ってないんだよ!大学出て就職するまでは、長い時間ガマンして働いてその分のお金をもらうしかないんだよ!」

「デモ…」

「なんだよ!」

「カミサマユッテタ…」

「え?」

「オカネノカミサマユッテタ」

「な、なんて?」

「ケンタ、オカネノカミサマニナルッテ」

「え?」

※   ※   ※

「カミサマユッテタ。ケンタ、オカネノカミサマナルッテ」

「何言ってんの!!!そんなはずないじゃん!俺はもともと普通の大学生なんだし、かみさまがいてくれたおかげでいろいろ冒険できてたけど、かみさまだってもういないんだし、もとの普通の大学生に戻ったんだからこの先おかねのかみさまになるわけないじゃん!」

「デモ…」

「でもじゃないの!なれないの!お金持ちになるひとっていうのは初めから才能があって俺なんかとは違うんだから!勉強もするし、努力だってするし、なにより俺はできるだけ努力なんかしたくないんだから!むりむり!」

「…」

「いい?死神さん。死神さんは死神だからよくわからないかもしれないけど、世の中には恵まれてる人と恵まれてない人がいるの。産まれた環境だったり、努力できる才能だったり、イケメンだったりそれ以外だったり、俺は本当にどこにでもいる普通の大学生なんだから、普通の大学生がかみさまになったらおかしいでしょ。努力する人たちが努力する意味がないじゃない」

「ソレモソウネ」

「そう。だから、俺はこれから一生懸命働いて、二人分のごはん代を稼ぐから、死神さんも協力してよ!」

「ン-」

「なに」

「ツマンナイ」

「えっ?」

「ナンデモナイ」

「あ、うん。じゃあ、あしたからもよろしくね」

「ハイ」

「それじゃおやすみー」

「オヤスミ」

—-翌朝

「ん?あぁ…もう昼か…死神さん。起きてよ。バイトの仕込み行くよあれ?いない。もう行ったのかな?あれ?あ、手紙?」

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親愛なる健太くんへ

あなたがこの手紙を読む頃、
私はもうこの部屋にはいないことでしょう。

一緒にいた時間は短かったけど、
おかげさまで本当に楽しく過ごさせてもらいました。

考えてみたら、普段から人の死に慣れている私が、
こんなにやさしい気持ちで、
若者の成長を見届けるなんてことは初めてで、
自分でも不思議な感覚に包まれていたのを、
いまはなつかしく思います。

昨日君に言ったように、
君はおかねのかみさまになる人です。

カミサマが言っていたからというわけではなく、
誰にだってつまらない時代や小さな失敗はあるもので、
そこから先、臆病になるか攻め続けるかで、
人生は大きく変わります。

もちろん、人生は痛みの伴うことばかりだし、
失敗の直後の逃げ出したい気持ちもわかりますが、
失敗なんてものは、どれだけ痛みがあっても、
死んでしまうようなことにはなりません。

挑戦を続けていく上での痛みや苦労は、
将来もっと大きな挑戦に挑めるように、
カミサマが用意してくれたものだと、
誰かが言っているのを聞いた気もします。

健太くん。

私は朝一番の列車に乗ってこの街を離れますが、
もしまた自分の人生で何かに挑戦してみたくなったら、
迷わずおもしろいほうを選んで下さい。

そしたらまた、私はきっとあなたの横に現れます。

死神は人の死を愉しんでいると思われがちですが、
実はいきいきとした人を見るのが好きなんです。

何度倒されても立ち上がり、ひとにやさしく、
明るい笑顔で居続けることのできる人といると、
こっちまで楽しくなってきて「生きててよかったなぁ」って思うんです。

健太くんがこれからどんな人生を歩んでいくかはすべて健太くん次第ですが、
もう一度、一緒に楽しく笑って過ごせる日がくることを、
本当に心から楽しみにしています。

それでは、良い人生を。

シニガミ

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次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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