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アメリカの利上げが中国経済にとどめを刺す【経済ブロガー・山本博一】

連載23【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】中国経済は浮くか沈むか?  最近中国経済を擁護する論調が目につきます。例えば次のような記事。 「中国崩壊が実現しないのはなぜ?」  内容を紹介すると、 ・30年以上も中国経済崩壊説が流布されているのに、いまだに中国経済は破綻していない ・このような「崩壊説」は一定のニーズがあるので流行っただけ ・中国の経済規模は日本を凌駕する。このまま終わるわけがない  といった精神論、感情論からくるもので、論理的な根拠はないうえに、気になる点は、「アメリカの利上げ」を完全に無視していることです。  この擁護記事が掲載された日はアメリカ利上げ決定と重なります。無視するのはあまりに不自然です。つまり、この記事は、アメリカの利上げの悪影響を隠し、中国はまだ大丈夫だということを日本企業にアピールしたいだけのポジショントークなのです。  しかし、このタイミングでの中国擁護論は逆効果で「中国経済はもう限界」という証左にも思えます。日中間のビジネスを終わらせたくない人にとって、今回の米利上げは脅威そのものなのでしょう。  アメリカの利上げが、中国経済に及ぼす「悪影響」についてみていきましょう。 アメリカの利上げが中国経済にとどめを刺す【経済ブロガー・山本博一】米利上げが中国に及ぼす影響  なぜアメリカの金利引き上げが中国経済に大打撃を与えるのか? それは、金利を引き上げると、ドルで資金を調達している外資企業の資金調達コストが上昇します。  中国は海外から多くの企業を受け入れ、誘致して経済を成長してきました。外資の資金調達コストが上昇すると、それはそのまま中国からの外資引き上げに直結します。  また、アメリカの金利が上がるということは、元を売って、ドルを買う動きが起きやすくなります。つまり元安が発生します。元が暴落してしまうと、外資の中国離れがさらに加速するので、中国当局は手持ちのドルを売って元を買う、為替介入を行い、元を守らなければなりません。  しかし、当局が元を買い上げれば当然市場に出回る元の量は減ります。これは現在日本が行っている金融緩和とは真逆の金融引き締めに当たる行為です。  お金の量が減るなか、中国経済が浮上するわけがありません。  もはや中国経済失速は明白です。 ▼もう中国経済に振り回されるのは嫌だ!  とはいえ、急に中国経済が崩壊されても困ります。日本企業は中国から引き上げ始めていますが、まだ多くの日本企業が中国に残っています。また、中国の貿易額はアメリカを凌ぎますので、その経済的影響は無視できません。  ならば中国経済を助ける? いやいや、それだけは勘弁願いたい。  本当にいやらしいジレンマですが、日本人だけではなく、「もうこれ以上中国経済に振り回されるのは嫌だ!」と考えている人は多いでしょう。  ではどうすべきか? 答えは簡単で、中国の代わりを立てればいいのです。中国の強みといえば安い人件費だけですが、もうすでに中国の人件費は日本を超えてしまっているようです。詳しくは以前記事(「日本企業の中国離れ」は止まらない)にしましたのでご参照ください。  したがって、ほかの東南アジア諸国に中国の代わりを務めてもらいましょう。  そして、そのカギを握るのがTPPとアベノミクスです。TPPで統一された投資のルールが確立されたことにより、今後日本やアメリカから東南アジアへの投資が拡大されることが予想されます。あとはアベノミクスで日本経済を復活させ、東南アジア諸国と交易でWin-Winの関係が構築できれば、中国経済を空気にすることが可能なのではないでしょうか。  インドネシアが急にTPPへの参加を表明したのは、こういった流れを読んだからだと思われます。少しずつ少しずつ脱中国を図っていけばよいのです。 ▼中国との正しいつきあい方  日本がやるべきは、もうこれ以上中国にエサを与えないことだと思います。そのエサとは具体的に言うと、 ・量的緩和の停止→元安圧力を緩和し、中国経済を助けることになる ・消費税の増税→日本の内需崩壊により、日本企業がまた中国に戻る  今後、冒頭に紹介した「中国崩壊懐疑論」や「アベノミクス批判」、「増税賛成論」の記事が多数出てくるでしょうが、決して真に受けてはいけません。迷惑な隣人は放っておきましょう。日本は日本の国益のみを第一に考えるべきです。 ◆まとめ米利上げのタイミングで急に湧く不可解な「中国擁護論」その中身は単なる中国シンパのポジショントーク日本はTPPで脱中国は可能、中国に振り回されることはなくなる中国にエサ(消費増税、量的緩和の停止)を与えるな!日本は日本の国益のみを考えればよい 【山本博一】 1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。動画配信番組「チャンネルくらら」の『ゆる~く学ぼう!日本経済』に出演中。4児のパパ
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