“サマースラム98”in MSG――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第296回(1998年編)
この日、ガーデンは超満員札止めの1万9066人の大観衆を動員し、MSG内のザ・シアター(旧フェルト・フォーラム)でおこなわれたクローズト・サーキット上映も2522人を動員。ガーデンは76万4165ドル、ザ・シアターは3万2688ドルの興行収益をあげた(主催者発表)。
ストーンコールド対アンダーテイカの一戦はスーパーヘビー級のぶつかり合いとしてはめずらしい20分を超す耐久マッチとなった。試合開始から7分ほどが経過した時点で、ロープワークのさいにストーンコールドの頭部とアンダーテイカーのヒザが衝突し、ストーンコールドが軽い脳しんとうを起こした。この想定外の“接触事故”でストーンコールドの動きが明らかに鈍くなった。
中盤戦、アンダーテイカーの弟ケインがリング下に出現したが、兄アンダーテイカーが弟に「オレはひとりで闘う。お前は帰れ」と命令し、ケインはこれに従った。“墓掘り人兄弟”はここでも大河ドラマのワンシーンを演じた。
ストーンコールドがロープサイドでのクローズラインでアンダーテイカーをトップロープごしに場外にたたき落とした。アンダーテイカーはトップロープに腕をからませて後方に1回転し、そのまま場外のフロアに着地したが、このときに“古傷”の右足首を負傷してしまった。
場外乱闘はリングサイド・エリアからアリーナ席中段へと移動し、アンダーテイカーのバック・ボディー・ドロップ(ショルダースルー)でダイレクトにフロアにたたきつけられたストーンコールドはここで腰を痛めた。
ストーンコールドをリングサイドのスペイン語実況テーブルに寝かせたアンダーテイカーは、コーナーからの“5メートル・ダイブ”を敢行。ギロチンドロップとセントーンの中間のような体勢でアンダーテイカーの両脚がストーンコールドの胸のあたりを直撃したが、テーブルは壊れず、両者はやや不自然な形でフロアに落下した。
終盤戦、アンダーテイカーが“ロープ歩き”にトライするとストーンコールドが下からの急所攻撃をお見舞い。動きが止まったアンダーテイカーにストーンコールドがストーンコールド・スタナーを決めて速攻の3カウントをスコアした。アンダーテイカーのツームストーン・パイルドライバーは不発に終わった。
試合終了後、レフェリーからチャンピオンベルトを奪ったアンダーテイカーは、新調されたばかりのストーンコールド・オリジナル仕様の“ドクロのベルト”をみずからの手で勝者に手渡した。
アンダーテイカーのフォール負けもひじょうにめずらしいが、“怪奇派”がこんなふうに人間的な一面をみせるのも異例のケースといえた。ひとつのドラマの“最終回”をイメージさせるラストシーンだった――。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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