“大化け”ロックのピープルズ・エルボー ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第301回(1998年編)
第4試合ではシングルプレーヤーとして売り出し中のブラッドショー(のちのJBL)がベイダーと対戦し、ランニング・クローズラインとネックブリーカードロップの2段攻撃で実力者ベイダーからフォール勝ちをスコア。ベイダーはこの大会の数週間まえにWWEフロントに契約の途中解除を申し出ていたといわれ、そういった政治的状況がそまま試合結果に表れた一戦だった。
ロック対マンカインド対シャムロックの金網“トリプル・スレット”は全9試合中、第6試合というどことなく中途半端なポジションにレイアウトされていたが、ロック対マンカインド、ロック対シャムロック、マンカインド対シャムロックという3通りのシングルマッチの顔合わせはいずれもスリリングな展開で、1万7000人の観客はこの3選手の動きに一喜一憂した。
ロックとマンカインドとシャムロックはアスリートとしてのバックグラウンドもキャラクターも異なるレスラーだが、3人が3人とも対戦相手とシチュエーションによってベビーフェースでもヒールでもいかようにも演じ分けることができるという意外な共通点を持っていた。
ロックがシャムロックとマンカインドのふたりをキャンバスに寝かせ、エルボーパッドを観客席に投げ込み、のちにトレードマークとなる独特のリズム&モーションからピープルズ・エルボーを炸裂させたワンシーンはこの夜の最大の見せ場だった。
ケージ内から場外に脱出した選手の勝ちというエスケープ・ルールと通常のプロレス・ルールが併用された金網“トリプル・スレット”は、マンカインドが金網最上段から場外エスケープを試みるなか、リング内ではロックがシャムロックをイス攻撃でKOして3カウントのフォールをゲット。かなり微妙なタイミングで勝利をものにした。
ストーンコールドの突然の王座転落劇とロックの“大化け”は、じつはワンセットのプレゼンテーションになっていた。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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