大長編ドラマ『アンダーテイカーとケイン』――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第298回(1998年編)
アンダーテイカーとケインを主役としたホラー・ストーリーはWWEオリジナルの大長編ドラマである。
アンダーテイカーが兄で、ケインは弟。ふたりは幼いころに生き別れたかわいそうな兄弟で、ケインを“現世”に導いたのはアンダーテイカーの元マネジャーのポール・ベアラー。その昔、生家の火事で焼死したことになっていたケインはじつは死んでいなくて、火事の原因をつくった兄に復讐をとげるためにWWEにやって来た、というのがこの物語の設定だった。
ケインの赤い特殊マスクと全身コスチュームはやけどの傷を隠すためのプロテクターで、P・ベアラーに育てられたケインは炎を自由自在にあやつることのできるスーパーナチュナル・パワーを身につけていた。
“アンダーテイカーの弟ケイン”という新キャラクターは、その企画段階からデビューまでに約1年という時間が費やされた大型プロジェクトだった。完全なフィクション――オリジナル商品――でなければロングセラーはプロデュースできない、というのがビンス・マクマホンの持論だった。
ケインを演じるグレン・ジェイコブスは1993年にフロリダでデビューし、“マレンコ道場”によるブッキングでプロフェッショナル・レスリング藤原組での長期滞在修行をへてテネシーUSWA、SMW(スモーキー・マウンテン・レスリング)をサーキット後、1995年にWWEと契約。無名時代のケインと藤原喜明、石川雄規らに接点があったというのは意外な感じだ。
公称7フィート(約213センチ)の長身を誇るジェイコブスは“悪い歯科医”アイザック・ヤンカム、にせディーゼルといったキャラクターに扮したあと“怪奇派”ケインに変身した。
ケインとしての正式デビューは、アンダーテイカー対ショーン・マイケルズのヘル・イン・ア・セル(巨大変形金網マッチ)がメインイベントにラインナップされたPPV“イン・ユア・ハウス/バッド・ブラッド”(1997年10月5日=ミズーリ州セントルイス)だった。この日、ライブの観客のまえに初めてその姿を現したケインは金網マッチに乱入して兄アンダーテイカーのフォール負けを誘発した。
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