北朝鮮のミサイルには反撃できず、EEZに落下するミサイル破壊も違法――手足を縛られた日本の防衛政策の現実
<文・自由民主党政務調査会審議役・田村重信>
北朝鮮が立て続けに実施してきたミサイル発射実験は、最近少し落ち着いていますが、油断は禁物です。
北朝鮮は、2016年の2度の核実験と23発の弾道ミサイル発射に加え、2017年5月には3週連続で弾道ミサイル発射に成功しました。また、日本の排他的経済水域(EEZ)内にも今年だけで4発着弾させ、その挑発行為は我が国が到底看過できないレベルに達しています。度重なる核実験とミサイル発射は日本国民にとって深刻な脅威です。
北朝鮮は、数年前から日本を含む関係国に対する挑発的言動を繰り返しています。北朝鮮の労働党機関紙である労働新聞(2013年4月10日付)では、「わが国(北朝鮮)への敵視政策が日本にもたらすのは破滅だけだ」というタイトルの論説で、東京、大阪、横浜、名古屋、京都の5都市の名前を具体的に挙げています。これらの地域には、人口の3分の1が住み、特定地域への産業が集中しているため攻撃に弱いと指摘し、戦争になれば「日本列島全体が戦場に変わる」と主張しました。
また、2016年3月には、日本にある米軍施設・区域も打撃手段の射程圏内にあり、その気になれば一瞬で日本を壊滅させると言っています。北朝鮮が新たな段階の脅威であることは明白です。
自民党では党安全保障調査会の下に「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」(座長・小野寺五典元防衛大臣)を急遽発足させました。そして、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を直ちに検討し、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を取りまとめ、「我が国独自の敵基地反撃能力の保有」「排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処」などについて、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、予算措置を含め、その実現を求めています。
特に「我が国独自の敵基地反撃能力の保有」は、マスコミに、「敵基地反撃能力の検討を提言」と大きく報道されましたが、従来からの「敵基地攻撃」や「策源地攻撃」などの用語は、先制攻撃ではないかという誤解の生じる恐れがあることから、今回「敵基地“反撃”能力」として、先制攻撃ではないことを明確にしました。
先制攻撃は、武力攻撃が発生する前に武力行使をするものであり、憲法上はもとより、国際法上も許されるものではありません。「我が国独自の敵基地反撃能力」については、こうした先制攻撃を考えるものではなく、このことを明示する趣旨で敵基地「反撃」能力との用語を用いた上で、これまでの法理上の解釈に基づき、かつ日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図る観点から検討すべきとしたものです。
北朝鮮は「東京、大阪、横浜、名古屋、京都」の5都市を攻撃対象に名指し
日本は独自の敵基地反撃能力を持っていない
『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』 北朝鮮のミサイルが東京に打ち込まれても日本は反撃できない。国民は自分の命と憲法9条のどちらを守るか決断を迫られている。日本人として当然知っておくべき防衛政策がこの一冊でよく分かる。 |
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