ジャスティンはお父さんに“誕生日おめでとう”の電話をかけた――フミ斎藤のプロレス読本#049【全日本プロレスgaijin編エピソード17】
テキサスの大学にいたころは、キャンパス・ラジオのDJをやっていたことがある。たぶん、ジャスティンはひとり遊びが得意なタイプなのだろう
たまにお父さんの仕事仲間が日本に来ると、いっしょに食事に出かけたりする。ついこのあいだは、大阪でベイダーさんと待ち合わせをした。子どものころからずっとそうだったが、お父さんの知り合いはみんなチャンピオンのせがれを“特別”に扱ってくれる。
でも、ジャスティンはツンツンしたイヤなやつにはならなかった。ジャスティンにとって、プロレスは近くて遠い世界だった。
ミスター・プロレスは、あと1回だけ日本のリングに立ちたい、と考えている。アメリカではついに引退式をせずにリングを降りた形にはなっているけれど、仲間には「オレはジャパンでリタイヤメント・ツアーをやるんだ」と話しているらしい。
ミスター・プロレスは、若いレスラーたちをつかまえてはレスリング・ビジネスのなんたるかをレクチャーしてきかせる。
「親父Dad、ハッピー・バースデー!」
ジャスティンのお父さんは、やっぱりクタクタになって寝ていた。徹夜で車を運転して家に帰ってきて、それからまた一杯やってからベッドに入ったところだった。ミスター・プロレスは、この生活のリズムを崩さない。電話の向こう側で、偉大なる父は完ぺきに寝ぼけているみたいだった。
ハーリー・レイスの息子は「しようがねえな」といって、少年の顔で笑った。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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