業界最大規模のアワード「AVオープン2017」の会場で「AVの未来」を見た気がした【カリスマ男の娘・大島薫】
―[AVオープン2017]―
見た目は美女でも心は男――。「カリスマ男の娘」として人気を博し、過去には男性なのに女優としてAVデビューを果たした大島薫。女性の格好をしたまま暮らす“彼”だからこそ覗ける、世の中のヘンテコな部分とは?
日本国内でAVの大きな祭典は2つある。
1つはJapan Adult Expo(JAE)というAVファン感謝祭イベントで、もう1つがAV業界内の作品に賞を付与するコンテスト形式の祭典AVオープンだ。そのAVオープンが「AVオープン2017」と題されて、今年も開催される。
7月12日行われたAVオープン2017開会式に、取材でお邪魔することができた。毎年7月に開会式が行われ、およそ4か月後の11月中に結果発表が伝えられる。この期間中にDVD、配信、レンタルの3つの売上合計金額が最も高かった作品がグランプリに選ばれるというわけだ。
今年で6回目を迎えるAVオープンは、ボクが現役のAV女優だったころにも開催されている。しかし、JAEのほうは参加したことがあったのだが、AVオープンはタイミングが合わず呼ばれることはなかった。まさか引退後訪れることになるとは思いもよらなかった。
17時ごろ開場し、続々と関係者らが着席する。各部門別にノミネートされている女優やメーカーの中に、見知った顔も何人かいた。ボクがAV業界を離れてからも、当然のことながらAV業界は続いてきた。取材以外では業界関係者のみの空間。この空気感に触れて、やっとボクの中にも業界の雰囲気が思い出されてきた。
会場は昨年大ヒットしたアニメ映画の主題歌が流れ、スクリーン上にはAVオープンのイメージ映像の終わりに、テロップで「この秋、日本中が自慰をした」と表示される。なんというか、こういうノリ。
18時から開会式本編が始まり、司会のいけだてつやさんと、三上悠亜さんの進行で式は進む。各部門の代表者であるメーカーや女優が壇上に上がり、冗談なのか本気なのかわからない決意表明のスピーチをする。会場からは笑いと、煽りが飛ぶ。ああ、この冗談なのか本気なのかわからない、という感じがまさにAV業界だったなぁと感じた。
ボクがAV業界を離れて久しい。もうすでに、AV女優をやっていた期間より、引退して作家業やタレント業をやっている期間のほうが長い。現役でその業界にどっぷりと浸かっている際には、近すぎて見えないものがたくさんあったなと思う。AVプロダクションの思惑や、AVメーカーの戦略、世間一般から見たAV業界という場所の印象。そういったものは離れてからこそ見えるものだ。
昨今のオリンピックに向けての規制強化、AV強要問題、見ようによってはAV低迷の時代、いまこのときにAVに関する大きなコンテストを開催する意味とはなんだろうか。今後数回に渡ってAVオープンの記事を書く予定だが、まずはそれをAV女優たち本人から聞いてみることにしよう。
■今年のAVオープンの「顔」にインタビュー
AVオープンは2014年に主催を知的財産振興協会(IPPA)へと変えてから、毎年イメージガールを起用することとなっている。過去のイメージガールは紗倉まなさんや、つぼみさん、三上悠亜さんなど、その年々でAV業界の顔となったであろう女優たちが抜擢されている。
そして、2017年のイメージガールは「橋本ありな」、「白石茉莉奈」、「高橋しょう子」の3人だ。今回、開会式前の忙しいお三方に取材をさせていただく時間を得られた。
橋本ありなさん、高橋しょう子さんはボクが現役を退いてからデビューされているお2人だが、白石茉莉奈さんとはJAEで同じ舞台に立っている。すでにデビューされて4年以上が経過しているが、いまだに現役でトップを走り続けているのはすごい。
まずは、そんな白石さんに3年越しのイメージガールへの抜擢はどのような心境か尋ねてみた。
「正直なところ、SODstarという私が所属するレーベルの女優さんが毎年イメージガールに選ばれていたので期待はありましたけど(笑)、そんなことより今年ノミネートする作品の中に私の作品があるのかな? ないのかな? という想いのほうが強かったですね」
なるほど。象徴的な存在として扱われるよりも、イチ演者としての意識のほうが強いというのは、これこそ現役だと思わせる。
一転、昨年デビューしたばかりの橋本ありなさんと、高橋しょう子さんはどうだろうか。AV業界に入ってきたばかりの彼女らからすると、AVオープンのイメージがピンと来てないのではないだろうか。高橋しょう子さんはこう答える。
「デビューして、去年はMOODYZさんから作品を出していただいたんですが、その作品が昨年のAVオープンで7冠を受賞したんです。だから、私の中ではやりきったというか、燃え尽きたので……。今年はイメージガールという立場だし、去年の自分の不安だった気持ちやがんばっていた気持ちを思い出して、今年ノミネートされている女優さんや監督さんをサポートしていきたいです」
このコメントに白石さんは「去年の”たかしょー”はすごかったもんねー!」と相づちを入れる。取材に同行した編集部の人間も、もちろんボクも素直に頷いた。もはや去年の高橋しょう子さんの話題はAV業界だけにとどまらなかった。



―[AVオープン2017]―
1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru 【関連キーワードから記事を探す】
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