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鴻上尚史 「第三舞台」30年の幸せな終幕

第三舞台

公式HPより

 第三舞台の公演がすべて終了しました。1月15日の福岡公演が大千秋楽、最後の公演でした。

 最後は、全国30の映画館で生中継されました。

 中継は、開演の30分前から始められました。劇場にお客さんが入ってくる時間から、ということです。

 客席のカメラを見ながら、「ああ、今、全国の映画館でも入場してくれてるんだなあ」と思ったら、突然、「よし、会話してみよう」と思い立ちました。

 演技チェック用のノートに「見えてる?」と書いて、カメラの前に立ちました。開演の6時直前のことでした。

 次に、「どこで見ているか、ツイートして下さい」と続けました。すぐに、僕のツイッターのアカウントに続々と発言が書き込まれ始めました。「四国高松で見てます」「滋賀です」「北海道の江別です」「六本木です」と200ほどの書き込みが続きました。

 最初は、ひとつひとつ、書き込みをカメラに向かって紹介していたのですが、さすがに、開演時間が近づいたので、「続々とツイート、ありがとうございます」と急いで書いて、「それではごゆっくりお楽しみ下さい」と締めました。

 終わった後に、「もうすぐ開演だと思って、携帯の電源をちゃんと落としたのに、そこでいきなり、ツイートしろって、無茶振りにもほどがあります(^^)」という書き込みをたくさんもらいました。

「映画館でスクリーンに向かって手拍子するというのは初めての経験でした」という書き込みもありました。多くの映画館では、拍手と手拍子が起こっていたようです。

◆鳴り止まぬカーテンコールに感謝

 そういえば、斉藤和義さんの曲を使わせていただいたのですが、福岡公演では、斉藤さんご本人も観劇にいらしていただき、「自分の曲に手拍子するのは生まれて初めてでした」という素敵にすっとぼけたコメントをいただきました。カーテンコールに、斉藤さんの曲を流しているので、他のお客さんと同じように手拍子をしていただいたということです。

 カーテンコールの最後の最後は、今までの全ての上演記録と、「第三舞台を創った人達」というタイトルで、今まで参加した全キャストと全スタッフの名前を全部、映像で流しました。そして、全てのロールが終わった後、ゆっくりと、「And」という文字を出して、そして、「You」と続けました。

 これで言いたいことは全部、これでお客さんはカーテンコールの終わりを納得してくれるだろうと予想しました。

 が、実際は、明るかった客席が暗くなり、静かな曲が始まり、コンサートなら、間違いなく総立ちだった客席が落ち着いて座るタイミングなのに、スタンディングオベーションの客席は誰も座らず、暗闇の中、延々と手拍子は続き、「And You」の文字が出ても何の変化もなく手拍子は続き、幕が降りて客席が明るくなってもまだ終わらず、手拍子は延々と10分間近く鳴り響きました。最後の最後の最後、僕が出て、人間的に説得して(?)やっと手拍子は止みました。

 この模様は、DVDの特典映像につけようと思っています。手拍子が終わらなかったのは、「いつまでも終わらせたくなかったからです」というツイートをたくさんもらいました。本当にありがたいことです。

 これで、第三舞台の30年間の歴史が終わりました。最後の解散公演で、映画館を入れて約3万5千人ほどのお客さんに見ていただくことができました。本当は、あと数万人のお客さんが見たがっていたとチケットの販売状況から想像がつきます。

 最後の最後に、こうやって盛大に送ってきただけたことが本当に幸せでした。

 22歳の時に役者5人と創った劇団でした。それが、ここまで続き、ここまで見に来ていただけたことが奇跡だと思っています。

 ともあれ、次に新しく始めるためには、ちゃんと終わらせることが必要だと考えて解散公演を決めたのです。

 次の仕事に向かって、役者も僕も活動を始めました。役者も僕も、芝居を続けていきます。

 第三舞台は解散しましたが、また劇場でお会いできたら幸せだと思っています。はい。 <文/鴻上尚史>

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