グラジは世界ブラスナックル王者――フミ斎藤のプロレス読本#096【Tokyoガイジン編エピソード06】
ひょっとしたら、世界ブラスナックル王座の価値をだれよりも理解しているレスラーはグラジかもしれない。世界ブラスナックル王座のチャンピオンベルトは、大仁田厚とミスター・ポーゴのあいだを行ったり来たりして、新生FMWではハヤブサがその腰に巻いた。
子どものころからチャンピオンベルトは大好きだったけれど、グラジがほんとうに心から欲しいと思ったのはゴールドのプレートのまんなかに“げんこつ”のイラストが彫られたあのベルトだけだった。グラジはFMW史、世界ブラスナックル王座の歴史をつぶさに目撃してきた数少ないウィットネスのひとりである。
欲しかったものが手に入ると、どうしてもみんなにみせびらかしたくなる。これは男の子の習性みたいなものだろう。荒井昌一社長に「イイデスカ?」と確認したら「いいです」という返事だったので、グラジはピカピカのチャンピオンベルトを自分のスポーツバッグのなかに入れてフロリダまで持って帰った。
きっと家族や親しい友だちは喜んでくれるだろうけれど、プロレスという仕事でチャンピオンになることがどういう意味であるかをみんながみんな理解してくれるとは限らない。でも、それはそれでいい。
チャンピオンベルトは、だれのためでもなく、自分自身へのごほうびのようなものだ。FMWからもらった体育会系のふだん着みたいなパープルのジャージの背中には“GRADIATOR”とプリントされている。スペルなんかどうだっていい。グラジエーターはジャパングリッシュの傑作である。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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