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オタク臭漂うアニメ絵・萌え絵ジャケに悶絶必至! 新時代のヘヴィメタル「同人メタル」の世界

同人メタルを代表するサークルたち

 同人メタルのグループは“バンド”ではなく、“サークル”と呼ばれている。同人メタルを代表するサークルといえば、REKION、Dragon Guardian、Unlucky Morpheus、IRON ATTACK!辺りなどが代表格だろう。

同人メタルを代表するサークルたちのCD。左上3枚がREKION、右上2枚がDragon Guardian、左下2枚がUnlucky Morpheus、右下2枚がIRON ATTACK!(筆者撮影)

 REKIONは、先述のYAMA-Bによるプロジェクトで、ジャーマン・メタル寄りの正統派ヘヴィメタルをやっている。すでに20年近い歴史がある最古参であり、特撮ヒーローソングっぽい楽曲や、アニソンのメタル・アレンジもやっている。  Dragon Guardianは、勇者アーサーによるアニソンとメロスピが融合した音楽性で、オタクメタラーは悶絶必至だ。足立区のご当地キャラ「アダチン」声優のkicKが唄った1stアルバム『聖邪のドラゴン』は、2008年度のディスクユニオン全店で最も売れたメタルアルバムであり、新時代の到来を感じさせた。3rdアルバム『Dragonvarius』ではLIGHTBRINGERのFukiが唄っている。  Unlucky Morpheusは、このFukiがヴォーカルのプロジェクトで、こちらも活動歴は10年くらいである。同人メタルらしく、初期は同人サークルの上海アリス幻樂団が製作する同人作品シリーズ「東方Project」BGMのメタル・アレンジを行なっていた。音楽性は、王道メロスピだ。  IRON ATTACK!は、ギタリストの屍忌蛇(しいじゃ、『けいおん!』のキャラクター・ソングに参加)の一番弟子のIRON-CHINOによるプロジェクト。同人メタルながら、ワールド・ツアーを行なっている。IRON-CHINOは、アニソンのメタル・アレンジによるABSOLUTE AREAというバンドでも活動している。音楽性は、やっぱりメロスピである。  ほかにも数多くの同人メタル・サークルがあるが、メロスピ系が圧倒的に多く、またオタク風味が濃い。

オタクカルチャーとジャパメタの幸福な関係

 そもそもオタクカルチャーとジャパメタは、ジャパメタの黎明期から近しい関係にあった。80年代にはメタル・バンドおよびシンガーが特撮やアニメの主題歌に起用され、90年代にはアニメタルが社会的なヒットを飛ばし、00年代にはアニソン歌手とジャパメタのヴォーカリストが集まってJAM Projectが結成され、多くのオタク・リスナーに支持されている。  また、洋楽ヘヴィメタルにおいても、メロディック・メタルの源流であるRAINBOWやイングヴェイ・マルムスティーンの世界観は、お城や騎士、ドラゴンなどファンタジックなものが多く、80年代後半以降、アニソンっぽいと言われたHELLOWEEN系譜のメロディックメタル・バンドが続々とデビューし、90年代には劇伴音楽のようなシンフォニックメタル、そして女性ヴォーカル・メタルが勃興した。これらは、ファンタジー系マンガ・アニメや、RPG(ロール・プレイング・ゲーム)の世界観と抜群に相性が良い。  これらの背景から、同人メタルの多くがメロスピ・シンフォ系でオタクっぽいことや、女性ヴォーカルを起用するケースが多いことは、歴史的必然であると言えよう。
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洋楽メタラーに立ちはだかる萌え絵CDジャケのハードル
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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