更新日:2022年10月29日 01:50
エンタメ

オタク臭漂うアニメ絵・萌え絵ジャケに悶絶必至! 新時代のヘヴィメタル「同人メタル」の世界

同人メタルとは何か?

 かつてバンドがデモ音源をリリースする際は、カセットテープを用いていた。だが90年代後半、CD-Rなど、CDメディアの環境が整ってきたことと、パソコンの大衆化によるコンピュータ音楽人口の増加によって、自主制作音楽が広まった。同人誌即売会にそういった自主制作の音源が並べられ、「同人音楽」という言葉も広く使用されるようになった。  なかでもヘヴィメタルの音楽性を持つ同人音楽は、「同人メタル」と呼ばれている。同人メタルの先駆者は、00年代以降の日本のヘヴィメタルを代表するバンドGalneryusの初代ヴォーカルを務めたYAMA-Bである。氏はGalneryus結成以前の1998年から、コミック・マーケットに参加していた。

同人メタルの先駆者、Galneryusの初代ヴォーカルを務めたYAMA-B(YAMA-B@GUNBRIDGEツイッターより)

 現在、同人メタルが販売されているイベントは、コミック・マーケット(略称“コミケ”)と、音系・メディアミックス同人即売会(略称“M3”)の即売会に二分される。前者のコミケについては、もはや説明するまでもないだろう。後者のM3は、コミケの音楽ジャンルでのサークル参加者が集って、1998年から開始された。こちらは、「音」に関連した作品を販売する音系即売会だ。  また、同人メタルは、同人誌専門店でも販売されている(通販も行なわれている)。同人メタル・シーンは、同人の即売会と同人誌専門店を中心に活性化しているのである。同人メタルに属する商品は、メタル専門店で販売されているものもあるが、主戦場はあくまでもオタク系の専門店なのだ。  活動・販売の場所が違うので、客層がまったく違う。メタル専門店の客層は、その多くが洋楽メタラーだが、オタク系専門店の客層には、洋楽メタラーはいない。いや、いるかもしれないが、探しに来ているのは同人メタルのCDではなく、オタク系の商品だろう(ぶっちゃけると、二次創作エロ)。

アニソンの延長線上としての同人メタル

 2007年頃のこと。筆者の原稿を手伝ってくれていたオタクの若者のお好み楽曲のなかに、イタリアのメロディックメタル・バンドRhapsody(現Rhapsody Of Fire)の代表曲「Emerald Sword」が入っていた。だが彼は、それをヘヴィメタルだと思っていなかった! というか、「ヘヴィメタル」という言葉は知っていても、それがどのような音楽なのか知らなかったのかもしれない。Rhapsodyを、単に海外のカッコイイ音楽として聴いていたに過ぎなかったのだろう。  何が言いたいかというと、メタル専門店の客層は、洋楽ヘヴィメタルの文脈を背負ったメタラーだが、同人メタルの客層はオタクであり、彼らの多くはヘヴィメタルの文脈を欠片も知らないのではないだろうか。メタラーには意外かもしれないが、ヘヴィメタルという音楽ジャンルは、若者にはあまり理解されていないと思われる。  つまり、オタクや若者は、既存のヘヴィメタルとの接点がなく、見事に断絶している。であれば、同人メタルを、ヘヴィメタルとしてではなく、アニソンの延長線上として聴くオタクや若者のリスナーも少なくないだろう。  これは、ジャパメタに新たなシーンが生まれているという見方もできる。もはやすでに、同人メタルは、ヘヴィメタルとは別のものないのかもしれない。
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同人メタルを代表するサークルたち
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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