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ISIS×フィリピン国軍による銃撃戦後の生々しい傷跡<現地レポート>

マラウィに暮らす人々の現在

 11月6日に残党9人が射殺されて以降、マラウィで戦闘は起きていない。完全鎮圧したといってもいいだろう。私は、避難所から大量の荷物を車に積み込んで帰還した家族を取材した。
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車に荷物を満載して避難キャンプから我が家に戻る人々

 荒れ果て、物が散乱した我が家にどこから手をつけたらいいのかと呆然とするおばさん、埃を被った粗大ごみの整理に精を出す人、さっそく商売を再開する人、悲惨な状況の中でも、我が家に戻る事ができた人々の表情には嬉しさがにじみ出ていた。
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散らかった部屋を見つめる子ども

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オモチャの拳銃

 一方で、戻ってみたものの火災や爆撃などで我が家を失ってしまった家族の中には、避難所へと戻ることを余儀なくされた家族も多数いる。また戦闘期間中に「複数の友人がISIS MAUTEのリクルートに応じてしまった」という男性は、戦闘終了後全員が死んだことを知り肩を落としていた。市内に土地や建物を所有する男性は「再建には5年はかかる。政府の援助だけでは不十分だと思う。外国政府の支援もあれば多くの人が助かるだろう」と話した。
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避難キャンプの様子。最大34万人超の避難住民が生活していた。現在も多くの人が家に戻れずにいる

 逮捕状の出ている過激派容疑者300人の内200人は逃走したままだ。少数は海外へ、大多数は国内に潜伏しているとみられている。  じつは取材中、反政府勢力に近い人物が我々の取材をコーディネイトしていた。地元でビジネスを手がける顔の広い彼のおかげで、地元住民への取材がスムーズにできたのだ。軍隊にこの代わりはできない。この地には数百年にわたる独立闘争に裏付けされた、反キリスト、反政府、親ISISあるいは親地元武装組織の土壌が根付いている。  900人もの戦闘員を失ったISISだが、すでに新たな動きが確認されている。11月下旬の時点で、ラナオ湖を挟んだコタバトやブディンといった地域で200人を新たにスカウトしたという情報が当局筋に入っている。現在は訓練を受けつつ、新リーダーの誕生を待っている状況だという。要するに、フィリピンのISISは死んでいない。
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検問所に張られた手配フラッグ。上段左の5人の中から次のリーダーが出てくると推測されている

 では今後どうなるのか。それはマラウィの戦いが起きた時の彼らの言葉が物語っているのではないか。 「これは、始まりにすぎない」 <取材・文・撮影/八木貴史>
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