北朝鮮危機“第2章” 中国を押しのけ急接近するロシアの影
「習近平国家主席と中国の努力には非常に感謝しているが、うまくいっていない――」
米中直接交渉の前日、トランプ大統領が自身のツイッターでこう不満を露わにしたように、北朝鮮問題を巡る米中両国の溝はなかなか埋まりそうにない気配だ。
6月21日、米中両政府が初めて開いた「外交・安全保障対話」の場で、米国は中国に対し、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を断つため、北朝鮮との不正取引に関与している疑いが濃厚な中国企業のリストを提示。取り締りの強化を強く求めたが、中国側は米軍が韓国への配備を進めるTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)にも反発しており、米国こそ早期に北朝鮮との対話のテーブルに着くよう主張するなど、終始、議論は平行線を辿った。
金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる』(育鵬社)が話題となっている、“チャイナウォッチャー”の第一人者で、保守派論客として知られる作家の宮崎正弘氏だ。
日本では、北朝鮮の「後見人」は唯一中国であり、中国が北朝鮮に働きかけない限り、事態は動かない、という見方が一般的だが、宮崎氏はこの「前提」そのものに疑問を投げかける。
「ロシアは今回の北朝鮮危機をきっかけに、再び世界の主要なプレーヤーに返り咲こうと機会をうかがっているわけですから、つまり、今回の事態を傍観することは絶対にあり得ません」
原油価格の下落で経済が長期低迷しているうえ、ウクライナ危機以降は、欧米諸国による経済制裁が重くのしかかるロシアとしては、起死回生の好機と捉えるのも頷けるが、問題は北朝鮮と中ロ両国の関係をどう読み解くかにかかっているようだ。
ロシアと北朝鮮は長らく距離を置いてきた関係でもある。第二次大戦以降、朝鮮民主主義人民共和国建国を経て、北朝鮮はソ連の手厚い庇護の下にあったが、フルシチョフの「スターリン批判」(1956年)やキューバ危機(1962年)を契機に関係は悪化。ソ連崩壊後も、ロシアは北朝鮮より関係正常化した韓国を重視するようになったため、国連での北朝鮮への経済制裁にも賛成しているほどだ。
実は、今回行われた「外交・安全保障対話」以前に、トランプ大統領は北朝鮮問題で明確な「期限」を設定している。
4月上旬に開催された米中首脳会談で、トランプ大統領が習近平国家主席に対し米中間の「貿易不均衡問題」の是正を迫り、両国で「100日計画」を立てて取り組むことで合意。会談後、この「100日」という数字が「北朝鮮問題にも当てはまる目標期限」とソーントン米国務次官補代行も明かしており、7月中旬が北朝鮮問題のタイムリミットと見られているのだ。
つまり、この猶予期間までに、中国が北朝鮮に対し具体的な行動を取らなければ、米国政府が独自に中国企業に対して制裁を科すことを辞さないばかりか、北朝鮮に対しても「あらゆる選択肢」のなかから何らかの行動に出る可能性が高いといういことだ。
加えて、北朝鮮に拘束された大学生、オットー・ワームビア氏が、昏睡状態で解放され死亡した問題が契機となり、米国内ではかつてないほど北朝鮮への反発の声が高まっている。
果たして、7月中旬のタイムリミットまでに何らかの動きはあるのか? そして、米朝の直接衝突が回避できないとき、日本は北朝鮮のミサイル攻撃に晒されることになるのか?
「眼前に危機が迫ったとき、日本はまずアメリカの動きを見なければなりません。次に、中国が、果たして北朝鮮危機に介入するのか? あるいは、金正恩体制を容認するのか? そして、韓国はこれらの国の動きにどう反応するのか? といった点を注視していく必要があります。ただ、日本のメディアではほとんど議論がなされていませんが、私がとても重要視しているのが、今回の北朝鮮問題のなかでロシアという“要素”をどう見ていけばいいかということなのです」
こう事態を分析するのは、今月、緊急出版された『1
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『金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる』 目の前の危機に、日本は適切に対応できるのだろうか。 |
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