フィリピン麻薬戦争、大量射殺の現場を密着レポート――ドゥテルテ大統領“違法薬物撲滅”政策の行く末
アメリカのオバマ大統領(当時)に対し「サノバビッチ」。国連に対し「バカ」。ローマ法王に対し「2度と来るな」。今や“暴言大統領”として知られるフィリピンのドゥテルテ大統領だ。
4月25日(火)、同国の弁護士がオランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)にドゥテルテ大統領らを「大量殺人を行っていた」として告発した。
彼が大統領に就任したのは2016年6月30日。大統領選挙公約の一つが“違法薬物の撲滅”であった。そして大統領に就任すると、すぐさま麻薬戦争を宣言。麻薬の売人、使用者・容疑者を殺害するのも厭わないという強硬策が国家規模で実行に移されたのだ。現在までに殺害者数は合法・非合法殺人を合わせて約8千人にものぼる。
こうした超法規的殺人は、やがて1万人を超えそうな勢いで増え続けていたのだ。その実態を探るため、私は1月上旬にフィリピン現地に入り、取材を開始していた。今回はその様子をお伝えしたい。
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夜9時をまわった首都マニラ。タフト通りとU.N.アヴェニュー通りの交差点付近は、混沌と喧噪に溢れていた。渋滞でひっきりなしに鳴らされるクラクション、路上に並ぶ屋台、大勢の行き交う人々、ジーブニー(乗り合いバス)を待つ客や客待ちのペディキャブドライバー……。
その交差点のほど近くに、マニラ警察本部(Manila Police District)がある。敷地内のMPDPC(Manila Police District Press Corps)、ここには昨年7月以降、世界中から大勢のジャーナリストが集まって来ていた。もちろん皆、麻薬戦争取材のためだ。今日も現地新聞紙やラジオ局などの記者やカメラマン、それにアルジャジーラ、CNNなど外国からのクルーらが取材に訪れている。日本からは、フリーランスとして参加した私が一人。
MPDPCは記者の取材拠点だ。皆ここに集まり、事件の一報が入るのを待つ。建物前の駐車場には、“PRESS”とロゴが入った取材車両が並ぶ。一報が入ると一斉に車に乗り込み、ハザードランプを点滅させたまま、車列を組んで猛スピードで現場に急行するのである。その様子は映画のカーチェイスシーンさながらだ。
とはいえ、事件の一報がいつ入るかはわからない。待ち時間は各自が自由に過ごす。コーヒーを飲み、仲間と喋るのもよし、写真や映像の編集もよし。フェイスブックやパソコンゲームを楽しむ記者も多い。
23時過ぎ、待ちに待った一報が入った。取材車両に駆け込むとドライバーがアクセルを踏み込み、車線を縫うようにすり抜けていく。否が応にも緊張が高まっていくなか、ドライバーがゲラゲラと笑いながらこう言う。
「まだ記者は2人しか殺してないから安心しろよ。はは!」
冗談ではない。こんなところで死ぬわけにはいかない。だが記者は乗ったら最後、運命はドライバーが握っている……。
フィリピン麻薬戦争、大量射殺の現場へ…
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