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世界中で勃発する「スニーカー暴行」事件史――シュプリーム渋谷店は氷山の一角、最高転売益700万円を巡る争い

 3月9日、白昼の渋谷で暴行事件が発生した。シュプリーム×ナイキ×NBAのコラボスニーカーを求めて行列ができていた『シュプリーム渋谷店』周辺での出来事。翌日発売予定のその「エアフォース1」は、純粋なスニーカーファン、ブランド愛好者だけでなく、転売屋と呼ばれる連中からも目をつけられていた。  人気の高い服や靴を買い占め、のちにプレミア価格で売りさばく転売屋の存在は、ここ数年で一気に問題化。浮浪者を雇った人海戦術や強引な割り込みなど、店と客にとって迷惑なことこのうえなしである。とはいえ、ショップやブランドとて無為無策なわけではない。まともなカスタマーに商品が行き渡るよう、さまざまな対策を講じている。  その一つがドレスコード。身分証明書をチェックし、さらに自社のアイテムを身につけていない人間には、行列や抽選に参加させないというもの。この日、シュプリームもドレスコードを設け、明らかにファンでない人間は並ばないよう注意していた。ところが一部が指示に従わず、警備担当者とトラブルになったわけだ。メディアに流れている1対複数の暴行動画をご覧になった人も多いだろう。加害者は転売屋に雇われた中国人たちとみられ、事件が起きた翌週には中国大使館が在日中国人に向けて、日本の法律を守るよう呼びかけた。 スニーカー

アメリカでは「エア ジョーダン」を巡って殺人事件まで発生

 スニーカーを巡る暴力事件、“スニーカーバイオレンス”は世界中で発生しており、特にアメリカでは銃と絡んで殺人事件まで起きてしまっている。はじまりは1990年に発売された「エア ジョーダン5」。言わずと知れたバスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンのために作られたバッシュの第5弾である。若き日のマイケル・ジョーダン本人の人気、新鋭の映画監督として台頭していたスパイク・リーが手がける広告、ハイテクスニーカーブームの夜明けなど、様々な要因が重なり、近未来的デザインのその一足は大ヒット。購入を巡って喧嘩が起こり、一人が射殺されるまでに至った。この事件により一層エアジョーダン(以降、AJ)シリーズは憧れの的、ステータスシンボルとして認知され、以降スニーカーカルチャーの頂点に君臨することとなる。  ’90年代は日本でも空前のスニーカーブーム。今のブームとは比べ物にならないレベルの熱狂度であった。代表するのがナイキの「エアマックス95」。イエローグラデと呼ばれる1stカラーを筆頭に2次流通価格が高騰し、着用者が路上で襲われる“エアマックス狩り”が社会問題に。今でも同モデルのオリジナルカラーは人気が高く、今年3月の復刻リリースの際も、取り扱い店には長い行列ができた。  2000年代に入るとスニーカーブームは徐々に落ち着いていく。とはいえ、AJシリーズや稀少なコラボモデルなど、広く話題になる逸品が時折登場し、フリークの心を刺激。完全に鎮火したわけではなかったと言える。  2011年のクリスマスシーズン、全米で「エアジョーダン11」の人気カラーである通称コンコルドが復刻発売。各地のショッピングモールに購入希望者が殺到し、店舗破壊や乱闘、果てには発砲騒動が起きた。当然、逮捕者も出て、各現場は暴動寸前のムードだったとか。  幸い日本ではファンこそ多いものの、そこまでメジャーではないモデルのため、発売日にも大きな混乱は見られない。むしろ、日本でパニックとなったのは、今年初めにリリースされたナイキ×リーバイスの「エアジョーダン4」だ。販売されるわずか139足を巡って、『リーバイス原宿店』では警察が指導するほどの行列ができ、抽選タイミングや方法の不備もあって大混乱。販売中止発表から一転の販売再スタートなど、店側のその場しのぎの対応もあって、店舗内は怒号が飛び交い、暴動寸前の空気であったという。  ここ数年は、ナイキ以外のブランドでもクレイジーな入手競争が目立った。ナイキのライバルであるアディダスは、大物アーティストのカニエ・ウエストと契約し、シグネチャーモデルの「イージーブースト」シリーズを発表している。昨年、同社のHPに侵入して、その人気カラーを根こそぎ手に入れた中国人ハッカーが、店舗で商品を受け取った帰りに大勢から襲われる事件が。ちなみにカニエ・ウエストは過去にナイキと契約しており、「エアイージー2」を製作。N.Yでは発売日の一週間前から行列ができ、ネットオークションで700万円以上の値がついた。
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ボルティモア暴動で参加者がニューバランス「990」を着用
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