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結局イニエスタは何がすごい? わかりやすく一言で説明してみた

「イニエスタが日本に行く」  その第一報が出たのは、今から数週間前のことだった。当初は「さすがに飛ばし記事では?」とその信憑性を疑う声も多かったが、その後も現地メディアが続報をリリース。現実味が高まるにつれ「マジで来るの!?」とネット上でも盛り上がりを見せていた。

5月24日にFCバルセロナからヴィッセル神戸への移籍を発表したアンドレス イニエスタ

 Twitter上では「#イニエスタのヴィッセル神戸移籍報道をサッカー知らんおっさんにわかりやすく説明する」というハッシュタグが発生。「紅白歌合戦にレディー・ガガ」「新仮面ライダーの主役がジャスティン・ビーバー」といった例えが上がった。

イニエスタはサッカー界における世界最高峰の名脇役

 だがこれらの多くは、正直言って的を得ているとは言いがたい。仮に来日するのがC・ロナウドやメッシのようなスーパースターであればその例えがしっくり来るが、イニエスタはC・ロナウドやメッシのような主演俳優ではない。一言で説明するなら、「サッカー界における世界最高峰の名脇役」なのだ。

#イニエスタのヴィッセル神戸移籍報道をサッカー知らんおっさんにわかりやすく説明する

 ロナウドやメッシのうまさは、普段サッカーを観ない人たちにとっても実にわかりやすい。1人で何人もの相手をドリブルで交わしてゴールを決めてしまうプレーはインパクト抜群で、誰がどう見てもすごい。その華やかなプレー振りは、さながらヒーロー映画の主人公のようでもある。  それに比べイニエスタのプレーは、そのすごさを一言で説明するのは少し難しい。トラップ、パス、ドリブルといったボールを扱う技術はどれも世界屈指だが、かといって決して派手さがあるほうではない。ゴールやアシストももちろん決められるのだが、むしろそれ以外の「数字に残らない気の利いたプレー」にこそ、その真髄があるのだ。

メッシとは異なるイニエスタのすごさ

 3年前、イニエスタとクラブ(バルセロナ)、代表(スペイン)の両方で長年ともにプレーしてきた左サイドバック、ジョルディ・アルバが来日した際、幸運にも長時間話を聞く機会に恵まれた。フットボールトークの流れの中で、「一緒にプレーした中で別格に上手いと感じた選手は誰ですか?」と質問したところ、彼は「メッシとイニエスタだ」と即答した。そしてメッシとは異なるイニエスタのすごさについて、次のように説明してくれた。 「イニエスタのすごいところは、常に試合の流れを読んでいて、どんな味方ともうまく合わせられるところだよ。バルサもスペイン代表もみんな個性が強いけど、イニエスタが入ることでチームの選手みんなが気持ちよく、ストレスなくプレーできるようになるんだ。味方をフォローするタイミングやパスの強弱の付け方、テンポの変え方などが常に絶妙で、僕としてもとてもやりやすい。彼と一緒にプレーすると、自分が本来持っている以上の力が出せるんだ」

 要は機械でいえばメインのパーツや大きな歯車ではなく、それらが淀みなく連動して動くために欠かせない潤滑油のような存在なのだ。料理に例えるなら、メイン食材ではなく出汁(ダシ)である。主役になることは多くないが、その存在が料理の完成度を決定付ける。食材の旨味を引き出すことに関しては右に出る者はいない。イニエスタとはそんな選手なのだ。  ヴィッセル神戸には、バイエルン・ミュンヘンなどでエースとして活躍したルーカス・ポドルスキという世界最高峰の“食材”がいる。ドイツ代表としてW杯も制覇したレジェンドだが、現時点では彼本来の旨味を100%出し切れているとは言えない。いわば神戸牛的なメイン食材であるポドルスキの旨味を、イニエスタはいかにして引き出していくのか。そして脇を固める日本人選手たちのポテンシャルをも目覚めさせてくれるのか。日本にやってきた「世界最高峰の名脇役」、世界が認めるいぶし銀の手腕に、サッカーファンならずともぜひとも注目していただきたい。 <取材・文/福田 悠>
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、今季は神奈川県フットサルリーグ1部HONU(ホヌ)でゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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