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サッカーW杯4強激突!「評価急上昇」のベルギーが勝てない意外な理由

 いよいよ、ベスト4が出揃ったサッカーW杯――。  今大会は、1次リーグで前回優勝国のドイツが敗退し、ラウンド16でスペイン、アルゼンチンが姿を消した。そして、準々決勝ではブラジル、ウルグアイが破れ、過去の優勝国が5か国もロシアを去っているように、かつてないほど番狂わせが多い大会となっている。  ベスト4に勝ち残ったのは、優勝経験のあるフランスとイングランド。そして、「史上最強」の呼び声も高いベルギーと、経験とテクニックを備えたタレントが豊富なクロアチア。果たして、栄冠をつかむのはどの国か?   ’98年フランス大会からW杯を取材するスポーツライター・栗原正夫氏に、栄冠の行方を予想してもらった。ちなみに、栗原氏は大会前、「本命フランス、対抗イングランド、穴がクロアチア」と、今のところ予想をすべて的中させている。まずは、4強の総評をしてもらった。
準々決勝のベルギー・ブラジル戦

準々決勝のベルギー・ブラジル戦。前半にベルギーが2点目を決め喜ぶケビン・デブルイネら 写真/時事通信社

【ベルギー】 「最強の呼び声高いベルギーは個が抜群に強く、ブラジル戦のようにハマれば確かに強いが、安定感には疑問符がつきます。勝っているときはいいが、先制されると意外に脆く、日本戦は逆転勝ちを収めたものの、リードされたまま試合終了というゲームも多い。つまり、ブラジル戦のときの戦い方を、残り2試合で続けられるか疑わしいのです。 また、チームに多いアフリカ系の選手は、爆発力はあるが、ムラッ気があるので安定感に欠ける。チームがちょっと崩れると一緒に崩れてしまうことが多い……。ワールドクラスのタレントが揃うが、チームとしてはまとまりに欠けるのも懸念材料ですね」 【フランス】 「何といっても、今大会の主役になりつつある19歳の超新星・FWエムバペが躍動すれば、フランスの優勝は固い。チームバランスがよく経験値が高いうえに、若手も活躍しており、FWグリーズマンなど欧州のビッグクラブに所属するタレントも豊富で選手層も厚い。 意外なポイントになるのが、フランスにはW杯やEUROなど大きなタイトルを獲得した選手がいないことです。ドイツやスペインはW杯など、何度もタイトルを手にしている国に比べれば、モチベーションは非常に大きい」 【イングランド】 「若手中心のチームは4年後のW杯に照準を絞っており、今大会はあまり期待されていなかったが、その分、プレッシャーを受けることもなく、のびのびとプレーする若手の勢いがいい方向に作用している。チームの調整も肌寒いくらいのサンクトペテルブルク近郊にキャンプを張り、選手のコンディションはいい。 ただ、有名な選手はCFのハリー・ケインくらいで、そのケインもイングランドでは名が通っているが、クロアチアのMFモドリッチやフランスのFWグリーズマンに比べるとやや見劣りする。ケイン以外の選手を見ても、所属チームの主役というわけではない。とはいえ、チーム全体としてコンディションがいいのは好材料ですね。若いチームだけに、調子に乗ると一気に勢いが出るかもしれない」 【クロアチア】 「やはり、MFのモドリッチ、ラキティッチ、コバチッチを擁する中盤は、ベスト4の4か国ではもっとも強力です。さらに、前線のFWマンジュキッチ、左サイドに張るFWペリシッチとタレントが豊富。中盤を制してゲームを支配すれば、クロアチアは強い。ロシア相手にPK戦までもつれたのは、地元の応援を正面から受ける格好にしてしまったからで、拙い戦い方でしたね。 弱点は、最終ラインにスピードがなく、イングランド戦では快足FWのスターリングや2列目から飛び出してくるMFリンガードに対応できるか、ちょっと心配ですね」  4か国の特徴やチーム事情を頭に入れたうえで、栗原氏の予想を聞いてみよう。 ◎準決勝 【フランス×ベルギー】 「ここへきて急にベルギーの評価が高まっているが、総合力ではフランスが上回る。また、ベルギーの3バックに対して、フランスは4-2-3-1なので、ベルギーがどう対応するのか、戦術面でもフランスに分がある」 【イングランド×クロアチア】 「クロアチアはデンマーク戦、ロシア戦と2試合続けて120分戦っているのに対して、イングランドは準々決勝を90分で勝利と、比較的ラクに勝っている。クロアチアの蓄積された披露が、イングランド戦では影響してしまう可能性が高いうえに、ケガをしている選手も多い……。本来の実力では、クロアチアのほうが少し上でしょうが、準決勝はイングランドが有利と見ていい」 ◎決勝 【フランス×イングランド】 「フランスがボールを保持する時間が長い展開になりそうですね。驚異的なスピードで得点を重ねているように、FWのエムバペは非常に体がキレている。彼が活躍すれば、フランスの優勝は固いでしょうね。仮に、エムバペが抑えられたとしても、彼に気を取られている隙にMFのグリーズマンやポグバが攻撃に顔を出し、攻め手は多い。 これに対して、イングランドの攻撃はどうしてもCFのケイン頼みになりがちで、ここを抑えられると攻め手がない。さらに、若いイングランドに比べ、経験値でも大きくリードするフランスが優勝するのではないでしょうか」  世界中を熱狂に誘ったW杯も、残すところ4試合。いよいよ本日7月10日27時、準決勝第1試合が行われる。
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