劇的敗戦も…世界に広がる「サムライブルーファン」。その声を聞いてみた
現地時間の午後9時(日本時間3日午前3時)に行われたW杯決勝トーナメントは日本が世界ランキング3位で優勝候補のベルギーに2点のリードを奪うも、立て続けに失点し同点、後半ロスタイムに相手カウンターから決勝ゴールを奪われ、敗退となった。
会場となるロストフ・アリーナのゴール裏で記者も眼の前で、原口、乾の鳥肌の立つような鮮やかなゴールを見たが、日本の勝利は遥か向こうのゴールに吸い込まれていった。
この日、記者は朝から晩までロストフダヌーの街を歩いていたが、試合前も試合後もとにかく多くの人に声をかけられた。そして、日本人でないのに「日本代表のサッカーが好きだ」という人がかなり多いということに驚かされることとなった。
先んじて行われたブラジル×メキシコの試合を市内のパブリックビューイングに観に行ったときは、「サムライブルーって日本語でどう書くんですか?」とロシア人の男性に英語で声をかけられた。なんでも日本人が各地で配っているハチマキが欲しかったが、手に入らず自作を試みているという。よく聞けば8年前の南アフリカW杯で日本のファンになり、この日、生で「サムライブルー」の試合が観られるのを楽しみにしているという。
彼が手にしていたハチマキは真ん中に「日の丸」のみがマジックで書かれた状態。記者にここに漢字で「サムライブルー」と書いてほしいという。そんなのお安い御用と「侍」「青」と太マジックで書いてあげたが、この時、間違いに気づいた。英語なら「Blue of Samurai」。漢字なら「青侍」が正しかったのではないかと……。
しかし男性は大喜び。「日本のユニフォームが欲しくてあちこち探したんだけどどうしても見つからなくて、(ロシアのクラブチームの)青いだけという理由で買っちゃったんだよ」といじらしい事を言う(その後スタジアムに行ったら、日本代表のユニフォームが売っていた。彼が無事購入できたことを祈る)。
「とにかくパス回しが早くてかっこいい。喜怒哀楽をあまり出さずクールなのもいいんだ!」と言いながら戦闘帽にハチマキを巻き「特攻スタイル」になりノリノリの彼。一緒に来ていたお父さんは苦笑いをしていたが、「今日は全力で応援してよ!」と言い固い握手をして別れた。
次に現れたのは、翻訳アプリを見せてきた青年。「私はあなたのことをこないだ知っています」。「?」なんのことかわからず首をかしげていると、青年が見せてくれたのは、ヴォルゴグラードで行われたポーランド戦のときの記者の写真。スタジアムでスマホに没頭する、なんとも冴えない中年日本人男性の姿だった。しかもご丁寧に動画にまでも映り込んでおり、やはり記者はスマホの画面を食い入るように見つめていた。
詳しく聞くと席がすぐ側だったようで、その時は話しかけられなかったとのこと。ヴォルゴグラードから400kmほどの街に住んでおり、今日はロストフダヌーまで、日本代表を追いかけてきたという(ロストフダヌー・ヴォルゴグラード間は500kmくらいの距離で比較的近い)。
「ナガトモ、ホンダ、ハセベ、ヨシダ、イヌイ……」とすらすらと日本人選手の名前が出てくる。ポーランド戦をどう思ったかと聞くと「ああしなければ今日の試合は無かったんだから正しい選択だ」ときっぱり。記者が昨日ロシアが延長PK戦の末スペインを下した試合を見ていたと返すと「ロシアよりも日本のほうが気持ちがある」「日本人はロシア人よりも心が強いから勝てるはず」と力強くうなずく。
「もし勝ったら(ベスト8の試合地の)カザンに行く」と追っかけ宣言までしていた彼。「もうスタジアムに行かなきゃ」とワクワクした顔で去っていった。
現地で多くの外国人に声をかけられて驚いた

日本代表を追いかけてきたロシア人青年
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