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SNSで”忙しいアピール”をするおっさんと、金魚の墓場――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第5話>

やっぱりおっさんと”死”は親和性があるのだ

「なんかね、忙しいアピールはあまりしなくなったけど、僕の悪口を書き始めたよ」  金魚の墓参りをしながら同僚にそう報告する。 「そうか、ダッカルビってお前か」 「おれ、ダッカルビ一度も食べたことないのに何でダッカルビなんだろう」  この同僚のマイホームには死のスペースがある。庭の一角に色々な生き物が埋葬されているそうだ。  特に3歳になるお子さんが、虫などの死骸を見つけては埋葬しているらしい。その死のスペースはなんだか「忙しいアピールおじさん」に近いものを感じてしまった。  僕らおっさんは若い人より少しだけ死に近い。おっさんの忙しいアピールは過労死、そのうち死ぬなどと死との親和性が高い傾向にある。  また同種のアピールで「健康診断の結果が劣悪」というアピールもある。これも「死」が近い。若い人が華やかなアピールをするSNSで死を漂わせるしかない、そんな物悲しさがそこにあるのだ。 「ちょっとあまりに行きすぎだから上の方を通じて注意してもらったよ、SNSに同僚の悪口書くなって注意がいったはず」  同僚はそう言っていた。それからしばらくしてオオシタの忙しいアピールは終わった。同時に忙しいアピールではない普通にSNS映えを狙った投稿が始まり、自分を装飾し始めたが、どうもその加減が分からないようで、 「夏祭りでもらったアロワナが死んだ」  と同じ町内会の夏祭りでもらった金魚が死んだっぽいのだけど、盛りすぎてアロワナが死んだことになっていた。なんだよ、アロワナをくれる町内会の夏祭りって、などとダッカルビは思ったのだった。 【pato】 テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri) (ロゴ/マミヤ狂四郎)
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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