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西島秀俊のセクハラはOKでも、普通のおっさんは存在自体がセクハラである真理――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第16話>

100個のケツ、全部好きなんですか? 全部舐められるんですか?

「なるほど、ありますね、そういうこと」  ハンドルを右に切りながら運転手さんはそう答えた。僕の怒りは収まらない。 「結局何をされるかではなくて、誰にされるかじゃないですか。そんな理不尽があってたまるんですか?」  例えば、チンコ型の饅頭を買ってきたのがKさんではなく、西島秀俊だったら騒ぎにならなかったかもしれない。秀俊がちょっとエッチな饅頭で遠回しに私を誘ってる、となったかもしれない。西島秀俊ならギリ、カラーコピー頒布も許されるかもしれない。結局、なにをされるかではなく、誰にされるかではないのか。 「でもそれって当たり前じゃないですか?」  運転手さんが、今度はハンドルを左に切りながら言った。 「どういうことです?」  僕が答えると、ルームミラー越しに運転手さんの「しまった!」という表情が見えた。おそらくあまり客の意見に反論しないように心掛けているんだと思う。 「気にせず言ってください。色々な意見を聞きたいです」  僕がそう告げると、運転手さんは少し間をおいて話し出した。 「あの、私、女性のワキゲにめちゃくちゃ興奮するんですよ」  いきなり性癖をカミングアウトしやがった! 「まあ、ワキゲがもじゃもじゃなほど興奮するんですわ」  なんでこの人いきなりこんな話してるの? 「それでまあ、嫁にも処理するなって言ってるんですけど、嫁は処理しちゃうんですね。どれだけ厳命してもダメです。処理するんです」  なんで嫁のことまでカミングアウトしてんの? なんで厳命してんの? 「でもね、ワキゲがもじゃもじゃな女であれば誰でもいいってわけじゃないんですよ」  運転手さんは話しながらどんどん怒りを思い出すタイプらしい。 「それなのに、あいつらは『ワキゲならなんでもいんだろう』とか言い出して、まったくポリシーも何もないワキゲを見せてきやがって。ワキゲをはき違えてるとしかも思えない。許しがたい。そもそもワキゲとはそっとそこに存在するのに暴力的な自己主張があってですね、それを理解しないワキゲはただの暴力ですよ、暴力」  なんか知らないけど誰かに対してめちゃくちゃ怒ってる! 「ワキゲならなんでもいいってわけじゃないんですか?」  僕がそう言うと、運転手さんはルームミラー越しに睨みつけてきた。まずいこと言った、と思った。 「いいと思ってるんですか? さっきの体育祭のお話ですけど、100個ケツがあって興奮したと言ってましたけど、100個のケツ、全部好きなんですか? 200ピース、全部舐められるんですか?」 「あ……」
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ワキ毛好きにも、ワキ毛を選ぶ権利がある
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