そして最後を飾るのはあの業界!
●ワンクリック詐欺サイトの電話番のおっさんに聞いた2018年の流行語大賞
エロいサイトなどを見ていると、勝手に変なページに飛ばされ、「登録されました」とデデーンと表示されることがある。登録されたので6万円払え、8万円払えとケバケバしい文字で書かれたりしているのだ。
これは「ワンクリック詐欺」と呼ばれるもので、勝手に登録し、お前の個人情報を知っているぞ、さあ金払え、という類の詐欺である。もちろん、登録料など払う必要もないし、解除をする必要もない。ほっとけばいい。
ただ、そういったワンクリック詐欺サイトの多くは「解除したい場合はこちらの番号に電話」と書かれている。不安になってこれに電話してしまう人もいるかもしれないが、その時点で電話番号を知られてしまうので、絶対にしてはいけない。
おまけに、電話するとたいていは怖い声のヤクザみたいなおっさんが出てきて、「エロいサイトみたいんだろ? ああん? 職場や家族に知らせるぞ」と脅してくるので、絶対に電話をしてはいけない。僕が代わりに電話しまくるので。連絡してはいけない。
ということで、そういう詐欺を働く強面の人の間ではどんな言葉が流行っているのか、片っ端から詐欺サイトに引っかかり、電話してみた。
「すいません、なんか登録されましたとかでたんですが」
「あ、そうですか、なんてサイトですか?」
「人妻濡れ酒場というサイトです」
「そうしますと、解除料が54,000円ですね。これで登録された個人情報を削除できます」
この会話の流れで2018年の流行語大賞を聞いてみた。
【第1位 金払え!】
当然のことではあるが、立派に詐欺を働いている人たちなのでこの文言が圧倒的にトップとなった。期待通りの結果である。ただし、
「登録されたからには払ってもらわないと困るわけですよ」(どすの利いた声)
「そんなことよりあなたにとって2018年の流行語は何ですか?」(能天気な声)
「誤魔化すな、金払え!」(怒鳴り声)
といった感じのやり取りがほとんどだったので、本当にアンケートの趣旨を理解していたかは疑問である。
【第2位 はあ?】
詐欺界ではこの「はあ?」が大流行の兆しである。そこから1位の金払えに繋がるケースも多かった。
【第3位 ふざけてると大変なことになる】
日常生活においてはあまり聞くことのないドスがピリリと効いた言葉がランクイン。どう大変なことになるのか詳しく聞いたが、あまり踏み込むと脅迫罪になると危惧しているのか詳しくは教えてくれなかった。とにかく大変なことになるらしい。
【第4位 (無言で電話を切る)】
何も答えず、電話を切るケースが散見された。登録されたからかけてこいとケバケバしくサイトに記載しておいてこれは大変失礼な行為である。
何度もかけなおして同じ質問を繰り返したが、着信拒否にされてしまった。公衆電話からもかけたがそれも拒否された。
なので「沈黙」が回答であると判断した。彼らにとって沈黙こそが流行語であり、詐欺という生業の中で沈黙を上手に使うことで成果を上げているのかもしれない。
もしくは流行を考えることなど愚かなことだよ、我々は言葉ではなく態度で示さねばならない、という言葉を弄する我々への強烈なアンチテーゼなのかもしれない。
【5位 そだねー】
真面目に答えてくれた人が1人だけいた。ここにきてついにユーキャンのノミネート語が出てきたのだ。
あまりにもいい人なので登録料を払おうかと思ったくらいだ。しかしながら、いまここで「そだねー」は微妙に古いし、そもそも今年だったのか、とハッとするだけである。
というか、すげえドスが効いたヤクザみたいな声の人がどんな顔して「そだねー」って言ってるかと思うと、笑えてきて登録料を払おうと思ったくらいだ。
このように流行語はその世界が変わればガラリと内容が変わる。日本全体で流行った言葉などと論じることがナンセンスなのである。だから世のおっさんは、この流行語大賞に踊らされて職場で流行語を使うことは既に4周遅れくらいでダサいし、誰もピンとこないことを理解しておく必要がある。
ちなみに詐欺サイトは、同率5位がもう一つあって、まあこれも一人しか答えなかった回答なのだけど、こういうものだった。
【第5位 誤魔化したい気持ちもわかるが、登録料を放置して自己破産した人もいる】
みんなそろいもそろって自己破産しすぎだ。
こりゃもう、おっさんどもの流行語大賞は「自己破産」でいいのかもしれない。存分に職場などで使って欲しい。
【pato】
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。
ブログ「多目的トイレ」 twitter(
@pato_numeri)
テキストサイト管理人。初代管理サイト「
Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「
おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(
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