更新日:2019年01月08日 10:53
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豊洲マグロの初競り、3億円超に吊り上がった舞台裏。「すしざんまい」と競ったのは誰か

史上最高値の初競りは「豊洲離れ」を止める?

 昨年までやま幸で大手寿司チェーンの仲買担当をしていた岡戸商事代表の岡戸宣人さんも、今回の青天井の初競りについて「意地のぶつかり合い」の印象を受けたという。 「今回、互いに一歩も引かず競り落とそうとしていたのは明らかで、マグロ1本に3億円出す店があって『何がなんでも落札してくれ!』という注文が出たからこそこのようなかたちになったのでしょう。(適正価格を超えた取引は)宣伝効果を期待したパフォーマンスで、本来の競りではないといった批判の声もありますが、漁師の人たちも喜んでいるし、市場関係者にとってはいいニュース。こうした景気のいい話題で魚を捕る人が増えてくれれば喜ばしいことですし、日本は水産物の取扱量が減少傾向にあり、流れが変わるきっかけになればいい」  市場関係者の多くも好意的に受け止めている。昨年10月に豊洲移転後、テレビの情報バラエティ番組などでは新しい観光スポットとして取り上げられるようになった一方、11月にはターレによる死亡事故が発生。水産物の取扱量も伸び悩み、緩やかに「豊洲離れ」が進んでいたからだ。木村氏が話す。 「豊洲移転で敷地面積は1.7倍に広がったにもかかわらず、取引量は“微増”にとどまっているのです。食の嗜好が多様化したこともありますが、インターネット取引も広がっており、商社や食品メーカーは安価な輸入品を直接仕入れ、加工して出荷するなど、卸売市場を通さない流通も増えている。昨年11月には環状2号線が暫定開通し渋滞も大きく緩和されたが、横浜、川崎、千葉など、ほかの水産物市場に比べて豊洲の取扱量の減少幅が目立つ……。ターレの事故も、再び同じようなことが起きれば、警察が場内の道路を公道とみなして取り締まりを行う可能性も出てきた。売り場が大きくなったので移動距離も長くなり、今後、競りの開始時間も早まるため、市場で働く人たちの負担はさらに増えていくことになる。移転後はそんな暗い話が続いていたので、今回、一番マグロが高値で落札されたのをきっかけに客足が戻れば、と期待する声も大きいのです」  初競りの日の朝、場内には繰り返しターレの荷台に人が乗ることを注意喚起するアナウンスが響いていた。築地から20年以上仲買人をしているという男性が話す。 「ターレの移動にいちいち注文付けられるようになったけど、乗りたくなる気持ちもわかるよ。ほかにも、施設は大きくなったのに店が狭くて仕事がやりづらいとか、みんないろいろ不満はある。ただ、(落札額の)3億円には、みんな驚いてたね。正直、高すぎるし、言いたいこともあるけど、今年に限ってはよかった。実際、例年なら落札額の高騰に文句を言う人が多かったけど、今年は歓迎してやりたいね」  移転が完了したことで収束したかに見えた「豊洲問題」は、今もなお続いているのかもしれない。 取材・文/日刊SPA!取材班 ※週刊SPA!1月8日発売号「今週の顔」より
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週刊SPA!1/15・22号(1/8発売)

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