更新日:2019年01月08日 10:53
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豊洲マグロの初競り、3億円超に吊り上がった舞台裏。「すしざんまい」と競ったのは誰か

マグロの新春初競り

昨年のリベンジを果たした喜代村の木村清社長。初競りの視察に訪れていた東京都の小池百合子知事は「大変景気のいい初競り。幸先のいいスタートを切れた」と語っていた 写真/AFP=時事

「やっちゃったね。やりすぎちゃった。5000万~6000万円くらいと思っていた。すぐ銀行さんに行かないと」  1月5日、豊洲市場で行われた新春恒例のマグロの初競りで、史上最高値となる3億3360万円で「一番マグロ」を競り落とした寿司チェーン「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長は、神妙な面持ちでこう話した。  落札された青森・大間産のクロマグロは重量278kgで、キロ単価120万円。2013年に同じく喜代村が競り落とした222kgの大間産クロマグロ1億5540万円(1kg当たり70万円)の2倍以上の値がついた。3億円の“プレミアム・マグロ”はすしざんまいの各店に配分され、中トロ1貫321円など通常価格で振舞われたが、注文した男性客の一人は、「3億円のマグロ、サイコーでした! (写真を撮って)SNSにも載せました!!」と笑顔で話した。  マグロの初競りが注目されるようになったのは、2008年に香港の寿司チェーン「板前寿司」を展開する実業家のリッキー・チェン氏が“参入”してからのことだ。2009年からは老舗の「銀座 久兵衛」とタッグを組み、仲卸大手「やま幸」を介して、毎年「史上最高値」で落札していたが、その後、板前寿司は撤退。喜代村の一人勝ちが続いていた。昨年こそ、ニューヨークにミシュラン2つ星店も出店する『鮨 銀座 おのでら』に負けたが、2012~2017年まで6年連続で「一番マグロ」を競り落とし、今回も「大本命」と目されていた喜代村は、昨年の屈辱を晴らすため並々ならぬ思いで初競りに臨んでいたという。築地時代から中央卸売市場の取材を続ける日刊食料新聞記者兼代表取締役の木村岳氏が話す。 「昨年の覇者・『鮨 銀座 おのでら』の仲買人を担ったやま幸が、最後の最後まで『すしざんまい』と競り合ったため、今回、最終的に3億円超まで値が吊り上がってしまった。やま幸は相当な意気込みで、初競りが始まるや、仲買人がパッと1本指を立てた……。競り人が『(キロ当たり)1万円?』と聞くと、『10万円!』と答えたので、いきなり10万円スタートの競りとなったわけです。市場関係者の誰もが『こんな競りは聞いたことがない』と口を揃えていたが、何がなんでも落札するつもりだったのでしょう。一方、喜代村の木村社長も、昨年は競り負け、世間の注目が集まらなかったので、今年は意地になっていた。だから、今回の初競りはスタート時点で大多数の仲買人はついていけず、事実上、この両者の一騎打ちとなったのです」
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史上最高値の初競りは「豊洲離れ」を止める?
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