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中年男、4人集まれば姦しい。おっさんの股関節を破壊するローカル電車――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第26話>

ローカル線の中で暇を持て余したおっさんたちは……

 列車が出発し、また静寂が訪れた。ゴトンゴトンと規則的に刻まれる音だけが車内に響き渡った。あまりに静かすぎる。  よくよく考えるとおかしい。あまりに静かすぎるのだ。先ほど乗ってきたおっさん4人組は何をやってるんだ。古くからの言い伝えによると“おっさんが4人集まるとめちゃくちゃテンションがあがる”とある。  それを思い出して彼らが乗ってきたときに「さあ、うるさくなるぞ」とワクワクしたのに、まるで死んだかのように静かだ。  もしかして、全員、昨晩はおたのしみでしたね、と旅館で言われるくらい温泉宿でのお遊びが過ぎて眠っているのか、それなら静かなのも分かる、と姿を確認すると、全員、目を見開いてギンギンに起きていた。  目を見開き、無言である。ちょっと怖い。  おっさんたちはどうにも心ここにあらずといった感じで、完全に時間を持て余していた。 「お酒、買ってくればよかったな」 「雑誌買えばよかったわ」 「トクちゃんがうんこしてるから」  どうも、トクちゃんのうんこのせいで買い物をする時間がなく、普通ならここで酒盛り、もしくは雑誌に没頭、などといきたいところなのだが、それらが全部だめになり、暇を持て余した、という感じだった。思った以上にトクちゃんのうんこ、罪深い。 「ゲームをしようか」  一人のおっさんが提案した。暇を打破しようとしたのだ。  あまりに暇をしていた他のおっさんもちょっと乗り気で、どういうゲームにするか考え始めた。結果、このローカル線を利用したゲームにしよう、となったようだ。  詳しく全部を聞いていたわけではないので細かい部分は不明だが、単純に次の駅で何人乗ってくるのか賭けるというものだったように思う。全員が何人乗ってくるのか申告しあい、当たればポイントゲットとなる。 「じゃあ、次の駅では何人乗ってくるでしょうか?」 「0人」「0人」「0人」「0人」  全員が0人にベットした。そして本当に次の駅では0人だった。これがローカル線だ。これではゲームにならない。そりゃ誰かが乗ってくる駅もあるだろうけど、0人が一番確率高い。そこに賭けるのは必然だ。 「ルールを変えよう、順番に指名されるようにしよう。次の駅はヤマちゃん、その次の駅が森さん、その駅で人が乗ってきたら一人につき10度だけ足を上げる。上がらなくなったら負けで罰ゲーム」  失敗を重ね、それをなんとか解決しようとルールが作られていく。おそらく世の中のゲームは全てそういった事情を経てルールが作られているのだ。 「ほら、ヤマちゃん、駅に着くぞ、何人乗ってくるかな~?」 「乗ってくるなよ~?」  ヤマちゃんが胸の前で十字を切る。 「0人だー! 誰もいない!」  おっさんたちめちゃくちゃ楽しそう。やはりおっさんは4人集まるとテンション爆上げになる。
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完全勝利を確信していたトクちゃん
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